福島の除染 国費投入の理由がない

なし崩しの東京電力救済は許されない。

東電福島第1原発事故による帰還困難区域の除染費である。政府が「復興拠点」を設けて国費を投入して集中的に除染し、インフラ整備も一体的に進める方針を固めた。5年後をめどに避難指示の解除を目指すという。

帰宅困難区域は放射線量が年間50ミリシーベルト超と高く、原則立ち入りが制限されている。避難対象の住民は約9千世帯の約2万4千人に上る。これまで本格的な除染作業は行われていなかった。

東電が負担する除染費用は政府が2013年に試算した2・5兆円から、本年度までに2・9兆円に膨らんでいる。帰宅困難区域を含めると最終的には大幅に増える可能性がある。

帰りたくても帰れない住民のため、政府が除染を急ぐ方針には異存はない。それでも除染費用は東電が原則負担することになっていたはずである。安易に国民負担に寄り掛かるべきではない。

東電の責任を曖昧にはできない。他の地区の除染費用と同様、一時的には費用を国が肩代わりしても、東電に請求するべきだ。

東電は迅速な事故処理より経営の維持を優先する姿勢を明確にしている。

東電ホールディングスの数土文夫会長は先月下旬の記者会見で、事故の賠償や除染費用が想定を上回る可能性が高まったとして、政府に負担を求める方針を明らかにした。国費投入は政府が要請を受け入れたことになる。

会見で数土会長は、電力自由化による競争激化や、柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働の遅れ、電力需要の減少など経営環境の変化を理由に挙げている。除染など費用の上振れは「経営に多大なインパクトを与える」という。

そうした経営上の理由が、なぜ国費を投入する理由になるのか。東電は16年3月期決算で1400億円超の純利益を計上した。除染を進める責任の一部を放棄する理由は現時点で見当たらない。

東電は第1原発の建屋地下にたまる高濃度汚染水への対応でも、責任感のなさを露呈している。

原子力規制委員会は汚染水が津波などで外部に流出するリスクを懸念し、タンクなどを増設して処理を加速するよう東電に要請。東電はこれを拒否し、今後数年かけて段階的に処理をする従来方針を繰り返している。

事故を起こした企業として何を最優先するべきなのか。改めて自問しなければならない。




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