<海外視察報告>千葉県議3グループが同じ文面 常態化

団体で昨年度に海外視察し、その費用に政務活動費(政活費)を充てた千葉県議の3グループ(計25人)が帰国後、グループごとに全員が同じ体裁や同じ文面の視察報告書を提出していたことが、県議会への取材で分かった。議員らによると、一部の参加者が書いたものをコピーしており、10年以上、常態化している。視察に充てた昨年度分の政活費は計922万円。識者は「報告書は実際に視察したことの証明になっていない」と批判し、報告書すら書かない議員は海外視察すべきではないと指摘する。

政活費は、地方議員に政策研究などの目的で、報酬とは別に税金を原資として支給される。千葉県議には条例に基づき、所属県議1人当たり月額5万円が会派に支給され、これとは別に各県議に対しても月額35万円が支払われる。視察に使う場合は目的や日程、訪問先、費用、結果などを記入した報告書の議長への提出が義務付けられ、行き先に観光地が含まれていれば、その分は差し引く。

7月に公開された2015年度の視察報告書によると、自民県議14人は3月22~25日、東日本大震災後から県産食品の輸入を停止している台湾を「輸入停止措置解除申し入れ」などの目的で訪れ、旅費など1人当たり最大21万円を計上した。

報告書は、前半のみ参加した1人を除く13人全員がA4判6枚。県議名と領収書の整理番号以外は「(解除に対し台湾の)生産者や団体からの圧力はないと思われる」「県の魅力を、もっと発信していく必要があると痛感した」など主観的な部分も含めて全文が同一だった。前半参加の県議は、前半部分だけの同じ報告書だった。

当時の副議長ら自民県議7人が総額の半分31万~48万円を計上したドイツ、チェコ、オーストリアへの視察(昨年5月19~28日)では、報告書の文字の大きさが一部で異なるが、文面は同じだった。

超党派議員連盟として自民と民主(当時)、維新(当時)の3会派9人が英、仏、スイス、フィンランドで行った視察(今年4月18~27日)は、文字の大きさも含め完全に同一だ。

複数の視察に参加した県議もいた。

台湾視察した県議はコピーを認め、「報告をまとめるのが得意な議員に手を挙げて書いてもらう。下手な文章で提出してもしょうがない。自分で書きたがる議員はアピールしたいだけだ」と話した。

一方、英国などの視察で報告書の原本を書いた県議は「議員連盟の事務局として作成した。事前に2回勉強会をし、視察後にまとめた紙を配布した。行程ごとに分担して書くこともあり、手抜きばかりではない」と強調。別の県議は「手伝ったかもしれないが覚えていない。少なくともベテランや文が下手な人は書かない」と述べた。

県議会事務局の増田等・総務課副課長は「事務局としては『団体で視察に行き、団体でまとめた報告書』という体裁ならば、同一でもしょうがないという認識だ。誰が書いて誰が書いていないかまでは追及しない」と説明している。

◇情報公開進めよ

前鳥取県知事の片山善博・慶応大教授の話 視察の報告書が同一だからといっても、住民訴訟で政務活動費の返還まで求めるのは困難ではないか。いいかげんな報告書かどうか、そういうものを出す県議かどうかを県民が判断し、選挙で審判を下すしかない。そのために必要なのは情報公開。千葉県議会は閲覧のみのようだが、最近はインターネットで報告書などをすべて確認できる議会が増え、情報公開をより進めていく必要がある。

◇「代返」と同じ

全国市民オンブズマン連絡会議事務局長の新海聡弁護士の話 報告書の目的の一つは「ちゃんと視察をした。遊びではなかった」と証明すること。自分で書かなければ「代返」と同じだ。単一の情報しか出せないなら無意味で、感想のない議員を連れて行く必要はない。きちんとした報告が書けない県議だと知らしめる意味でも、個別に書かせ、有権者が報告書にアクセスしやすい制度にすべきだ。

◇各地で不適正支出も

地方議員の政務活動費や政務調査費を巡っては、各地で不適正な支出が相次いで発覚し、政活費を使った視察などの成果にも厳しい目が向けられている。

山梨県では県議のエジプトなどへの視察を巡り、住民が「個人旅行と同じ」として旅費に充てた政調費と県費の返還を求めて提訴。東京高裁は2013年9月、「海外研修に名を借りた観光中心の私的旅行」と断じて全額返還を命じる判決を言い渡した(最高裁で確定)。判決では県議が視察後提出した報告書について「日本でも入手できる資料で観光ガイドのような説明」などと指摘した。

13年7月には兵庫県議(当時)が県内外に出張したと虚偽申請していたことが発覚。11~13年度に受け取った政活費1684万円のうち約913万円をだまし取ったとして、詐欺と虚偽有印公文書作成・同行使で有罪判決が確定した。

また、昨年末には東京都千代田区で区議1人当たり月15万円の政活費のうち10万円を議員報酬に組み込む条例改正案が検討されていることが表面化。「改革の流れに逆行する」などと反対意見が相次ぎ、改正案は提出されなかった。




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