アポロ飛行士に高い循環器系疾患死亡率、放射線が原因か 研究

米航空宇宙局(NASA)の有人月探査ミッション「アポロ(Apollo)計画」で、地球の磁気圏の保護領域を越えて宇宙を旅した宇宙飛行士らは、心臓および血管の病気での死亡率が過度に高いとの研究結果が28日、発表された。放射線がその原因と考えられるという。

宇宙機関や民間企業が人類の活動範囲を地球外に拡大することを目指して競い合う中、この研究結果は、月や火星やその向こうに旅立つことを夢見るすべての人にとって、健康上の懸念材料となる。

米フロリダ州立大学(Florida State University)のマイケル・デルプ(Michael Delp)氏は、「宇宙空間の放射線が人間の健康、特に循環器系に及ぼす影響をめぐっては、ほとんど分かっていない」「今回の研究によって、宇宙空間の放射線が人間に及ぼす悪影響について初めて知ることができる」と話す。

これまでに死去しているアポロ計画の宇宙飛行士7人のうち、3人の死因は循環器系の疾患で、その割合は43%となっている。循環器系疾患には、心臓発作、脳動脈瘤(りゅう)、脳卒中などが含まれる。

この割合は、訓練を受けたものの地球を離れなかった宇宙飛行士や、国際宇宙ステーション(ISS)の乗組員のように低周回軌道内の、地球のより近くにとどまった宇宙飛行士に比べて「4倍から5倍高い」という。循環器系疾患での死去の割合は、地球を離れなかった宇宙飛行士では9%、ISS乗組員などでは11%となっている。

研究成果は、英科学誌ネイチャー(Nature)系オンライン科学誌「サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)」に発表された。

今回の結果をめぐり研究チームは、「宇宙空間への有人飛行が、循環器系の健康にとって、これまで推測されていた以上に有害である恐れがあることを、これらのデータは示唆している」と論文に記している。

NASAのアポロ計画では、1968年~1972年の期間に11回の有人宇宙飛行が実施され、宇宙飛行士24人が地球低軌道を越えて宇宙空間への飛行を経験した。

地球とそこに住む人々を保護する磁気圏を越えた宇宙空間で、アポロ飛行士らは前例のないレベルの粒子放射線にさらされたと論文は指摘している。NASAによると、銀河放射線(宇宙線)の高エネルギー粒子は、皮膚を貫通して細胞やDNAを損傷する可能性があるため、人間に危険を及ぼす恐れがあるという。

これに対して、ISSは磁気圏内を通る地球周回軌道上にある。

宇宙飛行士の長期的な健康状態に関する調査で、実際の宇宙旅行を経験していない飛行士を比較の対象としてとして含めたのは、今回の研究が初めて。

宇宙飛行士と一般人とを比較することは、混乱を招く結果となり得る。全般的に高い教育水準と健康志向、さらには生涯にわたって利用できる医療ケアが、宇宙飛行士らにとって健康向上のための要因となるためだ。

今回の研究では、「地球を出ていない」「低周回軌道」「磁気圏外の宇宙」の異なる3タイプの飛行士を比較することで、無重力が循環器疾患に及ぼす可能性のあるあらゆる影響を排除できた。これら3グループではすべて、無重力状態を経験していたからだ。

また、死因としてのがんや事故に関しては、これら3グループの間に差はみられないことも、今回の研究で判明した。

アポロ飛行士らの循環器疾患による死亡率が他と比べて高かったことを受け、その原因の検証を目的に、研究チームは同程度のレベルの放射線をマウスに浴びせる実験を行った。

実験結果についてフロリダ州立大は声明を発表し、「人の20年に相当する6か月が経過した後、マウスは動脈の機能障害を示した。これは、人ではアテローム性動脈硬化症の発症につながることが知られている」と説明。デルプ氏は、「宇宙空間の放射線は、血管の健康に有害であることを、マウスの実験データは示している」と付け加えた。




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