「節電要請」ない夏に 再生エネ増で大震災後初

この夏は東日本大震災が起きてから初めて、政府が節電を呼び掛ける「節電要請」がない。家庭や企業で節電の取り組みが広がって使う電力が少なくなった上、太陽光発電など再生可能エネルギーが普及し電力の供給力も高まったからだ。原発ゼロでも余裕がある水準だが、専門家は火力発電所の稼働を抑えて二酸化炭素(CO2)の排出量を減らすためにも、引き続き節電は必要だと訴えている。 

昨年までは首相官邸が節電目標を示し、地方の経済産業局を通じて各業界に要請していた。

今年の政府の見通しでは、沖縄を除く大手電力九社の電力の供給力は、最も消費が高まる八月でも9・1%余る計算だ。既に稼働している九州電力の川内原発1、2号機(計百七十八万キロワット)が停止し「原発ゼロ」になったとしても、7%ほどの余裕がある。電力業界が強調してきた「電力を安定して供給するためには原発が必要」との説明は、説得力を失いつつある。

余裕が高まってきた背景には、節電が定着し電力の消費が減ってきたことがある。コンビニなどの店舗や企業、家庭では消費電力が少ない発光ダイオード(LED)の照明も増加。経産省のまとめでは、今年八月に必要な電力の予想は最大一億五千五百五十万キロワット。過去最大だった二〇一〇年より約14%減る見通しだ。

さらに今年四月から家庭も電力会社を選べる「電力の自由化」が始まり、毎日の消費電力量を細かく見られる「スマートメーター」も普及。「家庭が電力について考え、小まめにチェックすることで節電はさらに進む」(自治体職員)と期待されている。

供給力も増えてきた。太陽光を中心とする再生可能エネルギーの最高出力は八月時点で七百六十八万キロワットになる見通しで、三十万キロワットだった一〇年の二十五倍超。原発七~八基分に当たる。今後も出遅れている風力発電所なども含め、再生エネは増え続ける見通しだ。

ただ節電の取り組みが必要でなくなったわけではない。エネルギー問題に詳しい原子力資料情報室の伴英幸共同代表は「企業にも家庭にも節電の余地はあり、火力発電を抑えてCO2排出量を抑えるためにも節電は必要だ」と話す。一二年には政府が「電力不足」を唱えて原発を再稼働した経緯もあり、「消費電力が増えて供給力に余裕がなくなると、再び『原発が必要』との論拠にされる可能性も生じる」と指摘した。




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