「非正規雇用をなくして」 難病のシングルマザーが訴え

参院選の争点の一つが正規・非正規社員の格差の是正。多くの政党が「同一賃金同一労働」を公約で掲げるが具体的な道筋は必ずしも見えてはいない。東京都中野区在住のシングルマザーの女性(43)は「非正規という制度そのものをなくしてほしい」と訴える。 

「今の社会は一度、人生の太いラインから外れると、貧困を強いられ、逃れられなくなる」。女性は自分の人生を振り返り、そう実感している。

八年前までは都内に購入したマンションで、建築関係の仕事を持つ夫と二人の息子と暮らす、悠々自適の専業主婦だった。だが離婚を機に生活は暗転した。

子どもの親権は自分側となり、当時十一歳だった聴覚障害者の長男と九歳の次男を養うために、都内の小学校で、管理栄養士として働くことに。平日のみ午前八時十五分から六時間ほど働いても、手取りの給与は十万円程度。正規との差は二倍近くあった。

正規で働くことができる病院の管理栄養士の職もあったが、勤務時間帯は不規則で、シングルマザーの女性にとってハードルは高かった。「三人で暮らすにはギリギリの給与で、ぜいたくは敵でした」

ひどい倦怠(けんたい)感が続いたため、昨秋、病院で検査。脳全体が常に腫れる難病「下垂体前葉機能低下症」であることが分かった。日常生活もままならなくなり、今年二月に手術を受けたが腫瘍は摘出できず、今は薬で脳の腫れを抑えるしかない。副作用で仕事を続けられなくなり、今年六月末に解雇された。

離婚後、息子の通学のため自分たちがマンションに住み続けているが、難病に伴う傷病手当を受けているため生活保護を受給することもできない。これまでのわずかな貯蓄を切り崩して、何とか命をつなぐ。

厚生労働省の二〇一一年度の調査によると母子世帯の平均年収は二百二十三万円で父子世帯に比べ百万円以上低い。父子家庭の父親の67・2%が正社員であるのに対し、母子家庭の母親は39・4%。約六割が非正規となっていることが大きな要因だ。

バブル崩壊に伴う賃金の低下など労働市場が悪化し、非正規労働者数は日本全体で一五年に千九百八十万人を突破するなど右肩上がりの状況が続く。総務省の統計では、全体の雇用者数に占める割合は37・5%(一五年)と、今や五人に二人が非正規という現状だ。

投票日を間近に控え、各候補者の訴えのボリュームは大きくなる。女性は街頭演説を聞きに出向くこともできず、離婚前から飼う犬を抱いてソファに横たわる。「候補者の名前と党名の連呼は聞こえますが、非正規への言及は乏しい。政治家なら、もっと日本の足元、日本の現実を見てほしい」と感じながら、政治の声に耳を澄ましている。




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