【シングル時代】お一人さまの最期をどうするか? 「終活」を自治体と葬儀社が支援 生前に望むかたちを契約

独り暮らしの高齢者が増えるなか、自身の最期や死後の手続きに不安を覚える人は少なくない。そんな「お一人さまの終活」を自治体や葬儀社が協力して支援する試みが神奈川県横須賀市で始まっている。独居高齢者には生活にゆとりのない人も多いが、地域で支援することで希望に沿うエンディングがかなう可能性が出てきた。
    
◆ 引き取る人なく

「私 死亡の時 15万円しかありませんが 火葬 無縁仏にしてもらえませんか 私を引き取る人がいません」

昨年1月、横須賀市内に住む70代後半の男性が独り暮らしの自宅で亡くなった。誰にもみとられない最期。鉛筆で書かれた遺書には、何度も練習し、書き直した跡があった。

遺書を発見した同市自立支援担当課長の北見万幸(かずゆき)さんは「胸が詰まった。最期のときのために何とかためた15万円だったのでしょう」と振り返る。男性はがんを患い、自宅で療養しており、生活は楽ではなかった。ただ、そのお金は相続人以外は使えない。結局、男性は公費で火葬された。

◆ 葬儀社が協力

こうしたことをきっかけに同市は昨年7月から、経済的に余裕のない高齢者を対象に死後の手続きなどを支援する「エンディングプラン・サポート事業」を始めた。

対象はおおむね月収18万円、預貯金150万円以下程度で、身寄りのない高齢者。市が相談窓口となり、高齢者の希望などを聞いた上で、高齢者自身が事業に協力する市内の葬儀社と生前契約を結ぶ。契約した人には市がサポート事業への登録カードを2枚発行し、自宅内に保管したり、携帯したりしてもらう。万一の際には、カードなどを手がかりに、医療機関などから市や葬儀社に連絡が行き、葬儀社が契約に従って手続きを進める。生前契約にかかる費用は、生活保護受給者の火葬費用を基準とした20万6千円(平成28年度)。希望する人にはリビングウィル(延命治療の意思表示)なども確認するため、希望に沿った最期を迎えられる可能性が高まる。市は納骨までを見届ける。

現在は同市内の葬儀社9社が協力。その1つ、佐藤葬儀社営業部長の三上真弥さんは「自ら葬儀社には足を運びにくいもの。市の事業であることで、高齢者の方にも安心感が生まれる」。必要なら契約までに何度も自宅に足を運ぶこともある。「契約をして『気持ちが楽になった』と言ってくださった方もいた。不安を抱えたままの孤独死が減るお手伝いができればうれしいし、われわれの仕事の幅も広がる」と三上さんはいう。

◆ 課題は周知徹底

事業の背景には、同市で引き取り手のない遺骨が増えていることもある。15年度は15柱だったが、26年度は60柱に増えた。また、同市の人口約42万人に占める65歳以上の高齢者の割合は30%と高く、独居の人が昨年初めて1万人を超えた。うち2割は生活保護を受けている。「生活が苦しく、死後の不安を抱えている高齢者は多い。希望を聞いて寄り添うために、自治体にもできることがある」と北見さん。

ただ、問い合わせは多いものの現在までの契約者は5件にとどまっており、対象となる市民にいかに情報を届けるかが課題という。

身寄りのない高齢者の終活を支援する横須賀市の取り組みは、他の自治体からも注目されている。同市によると、神奈川県内をはじめ、関西や九州を含め61自治体の職員や議会が視察に訪れたり、問い合わせたりしている。

関東地方の市の担当者は、身寄りのない高齢の市民から不安の声が寄せられたことから、視察に訪れた。この市ではまだ検討段階だといい、「ニーズがどれくらいあるかも含め、横須賀市の取り組みに注目している。どんな支援が可能か、考えたい」と話した。




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