仕事がない!三菱自“城下町”残酷物語 「われわれも被害者」中小下請けからは悲痛な叫び

三菱自動車の燃費データ不正問題を受け、下請けや関連企業があえいでいる。岡山県倉敷市の三菱自の主力工場・水島製作所では軽自動車の生産ラインが停止し、従業員の一部は自宅待機が続き、関連企業の受注もストップしている。「三菱自と同罪だと言われると、本当に立場がない。こちらは被害者のはず」と自動車部品会社社長。大企業の不祥事に翻弄される中小企業、関連企業の悲痛な声が聞こえてくる。

「乗用車関係も含めて現在はすべての発注が止まった」と、地元のエンジン関連部品メーカーの関係者。岡山労働局や岡山県などが5月16日、倉敷市で開催した現地説明・相談会でも今回の問題の影響を訴える声が絶えなかった。会には水島製作所と取引のある中小企業や関連会社など43社から約60人が出席。不安な表情で助成制度などの説明に聞き入っていた。

東京商工リサーチの調べでは、三菱自グループと直接取引する1次下請けは、名古屋製作所がある愛知県が278社で最も多く、岡山県も156社を数える。倉敷市は主力工場・水島製作所のおひざ元で“三菱自の企業城下町”といえる。

水島製作所の平成27年度の生産台数は約30万台。軽自動車は日産自動車向けの約14万台を含め約18万台を占める。軽の生産ライン停止で、全従業員約3600人のうち軽の生産に携わっていた約1300人は自宅待機の状態が続く。

岡山県によると、水島製作所と周辺の下請けなどで働く人を含めると、県内で製作所に関わる雇用は約1万4千人に上る。

まさに「岡山県が直撃弾を食らったような話で、大変深刻な事態」(伊原木隆太知事)となっている。

岡山県が三菱自関連部品メーカー32社に実施した聞き取り調査の結果、年間売り上げに占める三菱自の割合について、100%が2社▽80%以上100%未満が9社▽50%以上80%未満が6社-などと判明。従業員数は1千人以上が3社▽500人以上1千人未満が6社▽200人以上500人未満が7社-などだった。一時停止を含む操業停止となった関連企業は15社、派遣中止を含む自宅待機は9社に上った。

それだけに「われわれも被害者として考えていただきたい」(部品メーカー)、「今は一切の出入りが不可で、8人のアルバイトには休んでもらっている」(同製作所で保安業務を請け負う60代の男性)、「全体の半分近くが三菱自関係の仕事。当然痛いです」(新車運搬を引き受けていた運輸会社の幹部社員)など、同製作所を取り巻く広範囲の業種から悲痛な声があがる。大企業による不正が、何の罪もない地方の中小企業などを追い込んでいる構図だ。

下請けや関連企業への救済策は徐々に進められてきた。伊原木知事は国土交通省や厚生労働省などを相次いで訪問し、国の支援を要望。県や倉敷市などは三菱自の取引先向けに最大5千万円の融資制度を創設した。地元の金融機関も融資条件緩和などの検討に入っている。

三菱自も自宅待機となっている水島製作所の従業員約1300人に、5月は平均賃金の80%超の休業手当を支払う案を労働組合に提示。そして、同月12日に日産自動車による三菱自への出資が決まった。しかし会社や工場、下請けがどうなるのか、先行きはまだ不透明だ。

地元の部品メーカーの一つ、水島機工(倉敷市)の滝沢公一社長は「(日産による出資は)朝、新聞を見て知った。三菱に話を聞いてみないとわからず、今の時点では皆目見当がつかない。水島製作所が残って、今まで通りの仕事ができればありがたいし、そうあってほしい」と話す。

また、倉敷市内の自動車部品関連企業は「規模の大きな日産の傘下になるときいて安心した。水島製作所の生産が続いてくれるかどうかが重要だが、日産は外資が入っているので、ドライに判断して動いていくかもしれないので心配。水島で軽自動車を作ってくれれば、ありがたいし、そう期待する」と一抹の不安を隠さなかった。

一方、倉敷市に隣接する総社市には三菱自関係の部品製造12社でつくる「協同組合ウイングバレイ」(昼田真三理事長)があり、約3千人が勤務している。同市は休業を余儀なくされる従業員に今年10月末まで日額1500円を支援することを決めた。

同市の片岡聡一市長は「日産への傘下入りが決まったとはいえ、不透明な点も多い。引き続き対応に万全を期す」と強調。それでも同組合の昼田理事長は「今後、日産傘下となり、部品製造にどう影響が出るか」と不安を口にしていた。




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