「がっかり名所」高知市の播磨屋橋が意外な人気

“がっかり名所”と久しく呼ばれてきた高知市の播磨屋橋(はりまやばし)。では観光客は、どの程度がっかりしているのか。高知新聞が聞き取りをしたところ「がっかりしていない」の声は6割超あり、さらに意外なことに、がっかりすることを望み、「小ささ」「貧相さ」を楽しむ人が多いようだ。

「がっかりなんて、失礼やで」

大阪府の一団はバスガイドから「日本三大がっかり名所」と紹介された。それでも村田俊三さん(68)は「近くで見たら立派なもん」とにぎやかに写真撮影を楽しんだ。

岡山市の女性(74)も「最初に架けられた江戸時代に思いをはせると、とっても立派な橋。風流でね」と、しみじみと橋に見入る。一方、東京都の女性(40)は苦笑いだ。「うわさ通り、がっかり。もっと趣がある方がいい。朱色はきれいだけど…」

観光客60人に印象を二択で聞くと、「がっかりした」という人は意外に少ない21人(35%)。残る39人(65%)は「がっかりしていない」と答えた。

■レッテル奏功?

がっかりの“名付け親”は作家の阿刀田高さん。エッセー集「三角のあたま」(1990年)で、播磨屋橋を「日本三大駄目名所」の筆頭に選んだ。他の2カ所は福井の東尋坊と札幌の時計台。現在の赤い太鼓橋は、その後の1998年に高知市が「汚名返上」を期し、周辺の公園と共に整備した。それでも、評判はいまひとつと言われてきた。

欄干から、ほんの数メートルにある土産物店の前田あさみさん(42)がぼやく。「お客さんから、『播磨屋橋はどこ?』『本当にこれだけ?』と言われます。毎日ですよ」ただ、今回の取材で、がっかりのレッテルが、かえって若い世代に面白がられていることも分かった。

「どれだけがっかりなのって、ワクワクしながら来た」と話したのは、和歌山県の公務員の女性(26)。橋の上で、高知県在住の友人と握手する様子をスマートフォンで撮影し、「ちっちゃくて、すごく唐突で、全力でがっかりさせてくれた。とっても面白い」。

佐賀県の30代の夫婦も「観光地としての推しっぷりと、実際の小粒さのギャップが不思議。期待以上のがっかりで、土産話になります」と楽しげに語る。

■逆に行きたい

鹿児島県の女性(26)が「がっかり」と答えた理由は、思ったよりきれいだったから。「期待したほどがっかりできなかった」「もっとショボいと思ったのに…」

がっかりに期待―。こんな新時代の楽しみ方のヒントはインターネット上にあった。

「日本三大がっかり名所」の紹介記事が複数あり、その1位が播磨屋橋。投稿には「逆に行きたくなってくる!」などの言葉が添えられている。

播磨屋橋が名所となったきっかけは、ペギー葉山さんが歌った「南国土佐を後にして」(1959年)の大ヒットだ。「昔から私は、がっかりなんて思ってないですよ」とペギーさん。「歌を聞くと、もっと大きな橋をイメージするかもしれないけど、今の橋は豪華だし。橋が親しまれていると聞いて、とってもうれしい」

昭和歌謡が広めた評判と、新しい時代になって期待されるようになったがっかり感―。 「はりまやばし」の文字横でスマートフォンやカメラでパチリ。がっかりしたい人たちがいて、がっかり名所はにぎやかだ。




http://www.kochinews.co.jp/article/19993/