子供の交通死亡事故に目立つ横断中巻き込み 娘に会いたい…続く苦悩

子供が犠牲になる交通死亡事故が後を絶たない。特に横断歩道を青信号で歩行中、大型車に巻き込まれるケースが目立つ。事故の度に違反取り締まりの強化や道路環境の改良など対策が講じられるが、それでも事故は続く。「また会いたい」。裁判を終えても時間がたっても遺族の苦悩は終わらない。5日はこどもの日。小さな命が一瞬で奪われる悲劇はなくならないのか。

「お母さん、青だよ」

昨年3月10日午後5時半。東京都多摩市に住む楠田真花(まなか)さん(8)の声で、母親(43)と妹、真花さんの3人は、交差点を自転車で横断し始めた。悲劇はほんの数秒後。痛々しい音とともに、母親の少し後ろにいた真花さんは左折してきたトラックの下敷きになっていた。

「いや!」。振り返った母親が叫んだが、もうできることはなかった。真花さんは病院に搬送され、約3時間後に死亡が確認された。顔にかかった布を口元だけめくった父親(43)は、思わず目を背けて処置室で絶叫した。

◆法廷で悔し涙流し

昨年11月から今年1月にかけて開かれた事故の刑事裁判。男性運転手の安全確認が不十分だったことが明らかにされた。助手席側のアンダーウインドー(足もとの小窓)が、置かれたマットで4年前からふさがれていた。「アンダーウインドーをのぞくと視線を下にずらすことになるので、ミラーで確認するくせがあった」。男性運転手はそう主張したが、検察は「遮蔽していなければ被害者を発見することが可能だった」と糾弾した。

被害者参加制度を利用し、父親や祖母も法廷に立った。運転手は被害調書も読まずに出廷し、安全不注意について言い訳を繰り返しているように聞こえた。「ゆっくりと頭を踏みつぶされる娘の気持ちが分かりますか。二度と使われないランドセルを見る私たちの気持ちは分かりますか」。父親が悔し涙を流しながら法廷で問うと、運転手はあっさり「分かります」とだけつぶやいた。

裁判官は運転手にせめて被害調書は読んでくるよう説諭したが、判決は「対人賠償無制限の保険に加入している」などとして禁錮2年、執行猶予5年だった。

運転手が所属する会社も「再発防止に取り組む」と訴えたが、当時の担当者は事故後に交代、証言台に立つことはなかった。

◆交差点に今も花束

事故から1年以上たった。現場の都道交差点には今も花束が供えられている。家族のショックもそのままだ。

「真花は飛び出したわけでもない。信号無視をしたわけでもない。横断歩道上で命が奪われるなんてあってはならない」。父親は判決後も残るやりきれなさを改めて訴えた。

一人で寂しくないだろうか、おなかは空いていないだろうか。いまだにふと考えては涙があふれる。将来はデザイナーに憧れて、たくさん絵を描いていた。「また会いたい」。父親、母親、妹は同じ思いだ。

子供が犠牲になる事故のニュースをみると心が痛む。「霊安室での一晩は本当に言葉にできない時間だった。他の事件をみると、この瞬間、また家族が自分たちのように苦しんでいるんだろうなと思うとつらい」。叔父(40)もそう打ち明ける。

父親が事故後に参加した「関東交通犯罪遺族の会」で会員が増えるのは、どこかで死亡事故があった証拠だ。「当たり前のように事故で人が殺されている。家族を奪われた人間として許せない。社会から一件でも事故がなくなってほしい」。父親は強く願っている。




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