新電力参入二の足 再稼働後の値下げ警戒

4月1日にスタートする電力小売り全面自由化。従来の企業や自治体に加え、家庭でも自由に電気の購入先が選べるようになるが、佐賀県内を含む九州に進出する新電力は10社程度にとどまるとみられ、利用者の選択肢が広がるとは言い難い。他電源に比べて発電コストが低いとされる原発を持つ大手電力の優位性は高く、再稼働後の料金値下げを警戒して参入の可否を慎重に見極める企業も多い。

「食品も値上がりして家計は大変。安くできればいいけど、そんなに少ないの?」。佐賀市の主婦(44)は県内に進出する新電力の少なさに驚き、「どこを選べばいいのか分かりにくいし、今のままでいいかな」とあきらめ気味に語った。

9日、家庭向け電気販売への参入を発表した石油販売地場大手の新出光(福岡市)。電気使用量の多い世帯で九州電力より割安のプランを打ち出す一方、会見した出光泰典社長は参入をめぐり、「家庭向けは利幅が薄く、収益が期待できない」と社内で反対の声もあったことを明かした。

九州で展開するガソリンスタンドの燃油代も割り引くプランを設けて顧客獲得を狙うが、販売開始は7月中旬に遅らせた。「既存客以外のセールスはかなり難しい。4月に販売を始める他社の動きも見て、打つべき手を考えたい」。慎重姿勢を崩さなかった。

「九電の現行料金は2番目に安い。あえて厳しい場所で競うつもりはない」。大手電力で最も安い北陸電力管内と九電管内への進出を断念した東京の企業は言い切る。「玄海原発が止まった状況でこの価格設定は脅威。再稼働すれば、とても太刀打ちできない」。

地域を独占してきた大手電力からの顧客獲得に「かなりインパクトのある料金を打ち出さないと、見向きもされない」(大阪の新電力)との声も聞かれる。待ち受ける九電は「長年築いた安定供給のノウハウがある。信用と実績で選んでもらえる」。顧客のつなぎ止めに自信を見せ、福島第1原発事故や「やらせメール」問題以降、控えてきたテレビCMの放映を再開するなど攻勢を強める。

1年前からバイオマスや太陽光発電で賄った電気を全国の企業や自治体向けに販売している関東の企業は「地域貢献名目の寄付など、電気以外で九電にお世話になっている需要家は多い。地方ほど、大手電力の影響力は絶大だ」。参入をためらう新電力の心情を代弁した。




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