後を絶たぬ高齢者施設での虐待・暴言 深刻な職員不足「過重労働」「質の低下」…

川崎市の介護付き有料老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町」で入所者の男女3人が転落死した事件で、殺人容疑で逮捕された元職員、今井隼人容疑者(23)はストレスを募らせていたとの供述をしている。この施設では、他にも入所者への虐待が起きていたが、高齢者介護施設をめぐっては、暴言や虐待といった事案が後を絶たない。厚生労働省の調査では、平成26年度の職員による虐待の確認は300件と過去最多を記録。専門家は過重労働によるストレスのほか「人手不足による質の低下もある」とみている。

今井容疑者は、この施設で約1年勤務。入所者の財布を盗むなどし、懲戒解雇となった。NPO法人「介護保険市民オンブズマン機構大阪」(大阪市)の堀川世津子事務局長は「今回は、そもそも職員の資質以前の問題だ」と話す。

ただ、施設では別の職員による虐待も発覚した。関係者が録音した記録によると、入所者が「怖いから嫌だ」などと職員におびえる声や、職員が夜中の巡回で「うるせえ」と暴言を吐く様子が確認されている。また、系列の大阪府豊中市の「アミーユ豊中穂積」でも昨年6月、70代の入所女性が職員に首を絞められて負傷する虐待が判明するなどしている。

神奈川県が公開する介護サービス情報によると、川崎の施設の27年8月末の報告では、職員41人のうち経験が5年未満は32人。3年未満は24人と経験の浅い職員が大半を占めていた。また、26年度は退職者21人に対し、採用は18人。職員が定着しない実情が浮き彫りになっている。

「高齢化が進み施設の数が増え、どの施設も人手不足で『来る者拒まず』という状況。採用した職員が必ずしも介護の資質を満たしているわけではない」。堀川事務局長は職員による虐待が後を絶たない一因には、こうした実情もあるとみている。

全国的にも施設での虐待は目立つ。厚労省の調査によると、26年度の介護施設での職員による虐待確認は前年度比35・7%増で過去最多となる300件。身体的虐待(63・8%)と心理的虐待(43・1%)が大半を占め、被害を受けた高齢者の77・3%に認知症があった。

虐待の要因は、教育や知識、技術の不足に加え、過重労働によるストレスなどがあったとされる。川崎の施設では、経験の浅い職員が大半を占める中、自分で食事や排泄(はいせつ)ができない要介護5の12人を含む70人が入所している。今井容疑者は調べに「入所者の言動に腹が立った。職場でもいろいろあった」などとストレスを募らせていた趣旨の供述をしている。

堀川事務局長は「認知症で意思疎通が取りにくい人がいるのに知識や対応方法が分からないまま働かなければならない施設もある」と指摘。「家族を預けたままではなく足しげく通うなど、安心した施設づくりには市民や家族の目が必要だ」と訴えている。




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