認知症、もう見逃さない 警視庁4万6000人 お年寄りサポーターに

認知症になってさまよったお年寄りが、警察官に発見されながら適切な救護を受けられず死亡するケースなどが相次いだことを受け、警視庁は約四万六千人の全警察官、職員が、困っている認知症のお年寄りを助ける「サポーター」となる取り組みを始めている。認知症での行方不明者は二〇一四年、全国で約一万人に上っており、一人一人が“お年寄り目線”のやさしいおまわりさんを目指す。 

「ゆっくりで結構ですよ、お待ちしますから。思い出したら教えてください」

専門家の意見を取り入れて警視庁が一五年末に作製したDVDでは、公園のベンチや交番などで認知症のお年寄りに質問する際、良い例と悪い例を具体的に解説する。

注意点として「大きな声で繰り返し聞くと、怒られているように感じ、自尊心を傷つける」「相手の言葉に耳を傾け、ゆっくりと対応して安心させることが大事」などを挙げている。認知症かどうかを判断するには、少し長めに話し、名前を言えるか、生年月日と年齢が合っているかなどを確認し、「あれ」「それ」などの指示語が多くないかに注意する必要があるとしている。

中野区では一四年八月、横浜市の福祉施設から行方不明になった認知症の男性=当時(83)=が路上で倒れているのが見つかったが、警察官に「(歩いて)帰れる」と答えたため保護されず、二日後に公園内で死亡した。家族が行方不明届を出していたが、警察官は身元照会していなかった。

一五年五月には北区の路上で倒れた七十代の男性を警察官が近所の人だと信じ公園に放置。その後、再び転倒したところを病院に運ばれた。いずれも警察官が認知症に気付けなかった。

これを受け、警視庁は同年夏、厚生労働省が認知症支援の一環で推進する「認知症サポーター」養成講座の受講を警察官と職員に義務化。全員が認知症の人を支援するための専門講座を今年三月までに受ける予定だ。

注意点などをまとめたハンドブックも全員に配布。生活安全総務課の長島秋夫理事官は「認知症のお年寄りや家族の心に寄り添い、適切な対応ができるよう意識を高めたい」と強調している。

高齢者福祉に詳しい淑徳大の結城康博教授(社会保障論)は「お年寄りが実際に認知症かどうかを判断するのは難しく、さまざまな研修で認知症のお年寄りと触れ合う機会を増やすのが重要だ。ほかの行政との連携や情報共有も不可欠」と指摘している。

◆11府県でも受講 全国的な連携に期待

警視庁の全警察官、職員が受講する「認知症サポーター」養成講座は、医療関係者などの専門家から研修を受けた講師が教える。九十分の講義の後、サポーターに認定される。警察庁によると、山形、大阪など十一府県でも全警察官の受講が進んでいる。

講座を運営する「全国キャラバン・メイト連絡協議会」(東京都新宿区)によると認知症サポーターはボランティアや行政関係者など全国で約七百十万人。担当者は「ある県で徘徊(はいかい)していた認知症の人が別の県で見つかることもあり、全国の連携が必要だ」と指摘し「今後、大都市ほど高齢者が増え、認知症への警察官の対応は大事になる」と警視庁に期待した。

サポーターの中には、認知症の人と近所の人らの交流の場として、ボランティアで「認知症カフェ」を開く人もおり、高齢者の異変を情報共有し、介護、医療サービスに結び付ける取り組みも広がりつつある。

<認知症不明者への対策> 

警察庁によると、認知症で行方不明になったという家族からの届け出は増えており、2014年は全国で1万783人(前年比4・5%増)で、行方不明者全体の13・3%を占めた。大半は当日~1週間で所在確認できたが、同年中に168人の所在が分からなかった。警察庁は着衣や体形、所持品などをデータベース化しており、衣服に名前や連絡先を付けることなどを呼び掛けている。




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