教科書問題 不適切な行為12社 関わった教員ら5000人超

教科書会社が教員らに検定途中の教科書を閲覧させたり、現金などを渡したりしていたことが相次いで発覚している問題で、文部科学省が各社に調査を求めた結果、こうした不適切な行為をした会社は12社に上り、関わった教員などは、合わせて5000人を超えていることが分かりました。

去年10月、教科書をつくる「三省堂」で、外部に見せることが禁じられている検定途中の教科書を教員らに閲覧させて現金を渡していたことが発覚して以降、「東京書籍」や「数研出版」でも同様の問題が明らかになりました。こうしたなか、文部科学省は、ほかの教科書会社にもこうした問題がないか調査して20日までに報告するよう求めていました。

その結果、平成21年度から昨年度までに、小中学校の教科書を発行する22の会社のうち半数を超える12社が、合わせて5157人の教員などに対し検定途中の教科書を閲覧させたり金品を渡したりしていたことが明らかになりました。

このうち、検定途中の教科書を閲覧させたうえで、現金や図書カードなどを渡していたケースは、10社から報告があり、関わった教員らは合わせて3996人でした。

検定途中の教科書の閲覧だけさせていたケースは9社で、対象の教員らは合わせて1151人でした。さらに1社は、自治体が使用する教科書を決める「採択」に直接関わる、教育長や教育委員10人に歳暮や中元を贈っていました。

教科書会社別では、業界最大手の「東京書籍」が、合わせて2245人の教員などに検定途中の教科書を見せたうえで、現金3000円から3万円や図書カードを渡していたほか、「教育出版」は、合わせて1094人に現金3000円から5000円を渡し、「光村図書出版」が、合わせて463人に現金2万円を渡していたということです。

謝礼を受け取った教員の中には、その後、教科書の「採択」に関わった人もいて、文部科学省は公正な採択に疑念をもたらす行為だとして、各地の教育委員会を通じて影響を調べるとともに、各社を厳正に指導することにしています。

今回の問題は、高い公共性が求められる義務教育の教科書を巡って行われていました。子どもの数が減るなか、教科書会社各社の営業が加熱し、多くの社が利益の追求に走っていると、とられてもしかたのない実態が明らかになりました。

一方、不適切な行為に関わった教員も5000人を超え、教育者としての自覚の無さや認識の甘さも浮かび上がっています。

多様で豊かな内容の教科書を子どもたちに届けるという本来の役割を果たすために失われた信頼をどう取り戻すのか、業界全体の取り組みが問われることになります。

東京書籍「社内に許容する雰囲気」

この問題で、業界最大手の「東京書籍」は22日午前、東京都内で記者会見し川畑慈範会長が「教科書への信頼を大きく損なうことになり深く反省しています。心よりおわび申し上げます」と謝罪しました。

この中で、東京書籍は、検定途中の教科書を教員らに閲覧させていたことについて「内容を充実させるためには教科書を直接見せて意見を聞くことが有効だと考えていた」と説明し、文部科学省がルールを定めてこうした行為を禁じた平成14年10月当初から続けていたことを明らかにしました。

さらに、検定途中の教科書を閲覧させていたことは、川畑会長をはじめ、幹部社員も把握していましたが、是正するなどの対応は取らなかったということで、「社内に許容する雰囲気があり安易な選択をしてしまった」と説明しました。

また、現金などを渡していたことについては、「教科書への意見を聞いた対価で『採択』されるよう働きかける目的はなかったが、疑念を招く結果となり不適切だった」と説明し、今後は見直す考えを明らかにしました。

東京書籍は今後、外部の意見を取り入れながら再発防止策を検討したいとしています。

光村図書出版 「採択してほしいという意識なく」

この問題で、「光村図書出版」は東京・品川区の本社で記者会見を開き、常田寛会長が「先生方、全国の児童・生徒、保護者の皆様の信頼を損ねる結果になりまして誠に申し訳ありません」と謝罪しました。

会社の説明によりますと、光村図書出版は、平成21年度から26年度にかけて合わせて63回、「教育フォーラム」という会合を開催し、合わせて463人の教員を招き、現金2万円と交通費を渡していました。
集まった教員には、日頃から教材について意見を聞いているため、実際に教科書がどう変わったのか示すために検定途中の教科書の一部のコピーを見せていたということです。光村図書出版は、一部を開示するのは問題ないのではないかと判断していたということです。

教科書の「採択」との関わりについては、「採択してほしいという意識はなく、その後、参加した先生方が採択に関わったかどうかは把握していない」と説明しています。

文部科学相「業界の在り方見直しを」

この問題で、馳文部科学大臣は閣議後の記者会見で、「不適切な行為が教科書会社の半数で発覚したという規模を考えると大変、残念なことだ。どういう理由でこのような事態になったのか把握したうえで厳しく対応したい」と述べました。

そのうえで「教科書を作成するにあたって現場の教員の声を聞くことを否定するつもりはないが、きちんとルールは守る必要がある。3か月以内には教科書会社と公平性について確認してルールを作りたい」と述べ、業界の在り方の見直しに向けて取り組みたい考えを示しました。

教科書協会「信頼の回復に努める」

この問題を受けて、教科書会社40社で作る「教科書協会」がコメントを出し、「義務教育の教科書は公的な学校教育の根幹をなす土台のひとつで極めて公共性の高いもので、教科書協会としてこのような結果になったことは痛恨の極みであり、深くおわび申し上げます。今後、公正性を確保するための仕組みや行動規範を策定し、各社が遵守するよう徹底して信頼の回復に努めます」としています。

各社 当初は同じような事例ないと報告

教科書会社が教員らに検定途中の教科書を見せたうえで金品を渡していた問題は、去年10月に表面化しました。

英語や国語の教科書を作成する「三省堂」が、教科書検定が行われていたおととし8月、都内のホテルに小中学校の校長など11人を招いて意見交換会を開き、外部に見せることが禁じられている検定途中の教科書を閲覧させて1人当たり現金5万円を渡していたことが発覚しました。

その後、会社はこれまでに同様の会議を7回にわたって開き、合わせて53人に上る校長らに現金を渡していたことを明らかにしました。

このうち21人は、教科書の「採択」に関わり、三重県四日市市などを含む、6つの地区で中学校の英語の教科書がほかの社のものから三省堂に変更されていたことが分かっています。

文部科学省は教科書採択の公正性や透明性に疑念を生じさせる不適切な行為だとして、公文書による指導を行うとともにほかの教科書会社にも点検を求めましたが、去年11月末の時点では同じような事例があると報告した会社はありませんでした。

しかし、NHKが取材したところ、複数の教科書会社の社員が教員らに検定途中の教科書を閲覧させたり現金を渡したりしていると証言しました。文部科学省は各社に対し、再検証して今月20日までに改めて文書で回答するよう求め、報告漏れが発覚した場合は教科書発行の指定の取り消しを含めた厳しい措置を検討する方針を示していました。

その後、今月に入っても、業界最大手の「東京書籍」が、およそ30人の教員を名古屋市のホテルに集めて会合を開き、検定途中の教科書を見せたうえで現金を渡していたことが発覚したほか、「数研出版」でも同じような問題が明らかになり、教科書会社による不適切な行為がどこまで広がっているのか、問われる事態となっていました。




http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160122/k10010381181000.html