「五味八珍」ポスターの子 今はラーメン店主

「子どもが食べ散らかすのを気にしないで」。静岡県内を中心に四十九店舗を展開する中華レストラン「五味八珍」(本社・浜松市東区)は、店内に張ったポスターでこんな呼び掛けをしている。手づかみでチャーハンを食べる男の子の写真は常連客にはおなじみ。ポスター制作から三十年余りがたった今、「男の子」だった梶原健太さん(33)は、浜松市内でラーメン店を営んでいる。

ポスターには「子連れのお母さんたちにもゆっくりと食事を楽しんでもらおう」という、創業者の渡瀬淳三さん(故人)の思いが込められている。一九八〇年代半ば、デザイン事務所を経営していた梶原さんの父親が制作を請け負った。

店内の撮影日。一歳だった梶原さんは父親に連れられ店に来ていた。疲れて客席で寝てしまったが、起きてからおもむろに目の前にあったチャーハンを食べ始めたという。カメラマンがその姿を撮影し、「自然な雰囲気が良い」とポスター写真に採用されることになった。

本来は梶原さんのいとこをモデルに起用する予定だったが体調を崩してこの日は来られなかった。偶然が重なってできあがったポスターは、かわいらしいしぐさの写真を通じて、店の方針を来店客に伝え続けている。

梶原さんは高校卒業後、しばらく運送の仕事をしていた。十年ほど前に親戚がラーメン店を出店したのを機に転職して手伝い始め、店の責任者も任されるようになった。自分の味を追求しようと独立を決め、二〇一四年五月に「らーめん酒房だるま」(中区中島)をオープンした。

自家製めんとこだわりのスープが自慢で、五味八珍のポスターで使われている自分の写真を店に掲げている。「ポスターの子だ」と気づく来店客も多いという。

渡瀬さんの長男で、五味八珍の現社長の徹さん(48)も人づてに梶原さんの開業を知った。「ポスターの男の子が成長してどうなっているか、ずっと気になっていた。ラーメン店を開いたと知って互いの縁の深さを感じる」と語る。

梶原さんは「幼いころから食べていた五味八珍のラーメンは自分の原点。皆さんきれいに食べてくれるが、家族連れには楽しく食べてもらいたい」と話している。




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