要介護者の外出支援サービス広がる 食事や入浴介助「旅を力に」

足腰が弱ったり介護が必要となったりした人の外出や旅行を支援するサービスが広がっている。旅行中の食事や温泉の入浴介助もしてくれ、家族だけでは難しかった遠方への旅行も可能になった。閉じこもりがちな高齢者にとって旅行は、心身の健康づくりにも役立つと評判を呼んでいる。

昨年8月、前野孝典さん(71)=千葉県松戸市=は、特別養護老人ホームで暮らす母、みよさん(96)を連れて里帰りするため、トラベルヘルパーの戸塚京子さん(58)の同行を依頼した。戸塚さんへの依頼は3回目で、前回は3年前だった。

みよさんは食事や排泄(はいせつ)など生活全般に全面的な介助が必要な要介護5。普段は呼び掛けても反応がほとんどないみよさんだが、新幹線に乗り、故郷の宮城県大河原町に着く頃には、目が輝き、周囲をうかがう好奇心ものぞかせた。

みよさんの姉(98)や親戚とともに墓参りをし、旅館に泊まって食事や温泉を楽しむなど2泊3日の旅を満喫した。

孝典さんは「施設では息子の私が誰だか分からないこともある母だが、旅に出たら表情が全く変わった。ヘルパーさんが入浴介助や就寝時のケアをしてくれるので安心して楽しむことができた」と満足げだ。

戸塚さんも「介助をしている方が元気になっていくのを見るのはうれしい。介助者やご家族に喜んでもらえ、やりがいがある」と笑顔をみせる。

戸塚さんは、NPO法人「日本トラベルヘルパー協会」(東京都渋谷区)が認定する介護技術と旅の業務知識を備えたトラベルヘルパーだ。看護師や介護福祉士などの有資格者であることが条件で、3級▽準2級▽2級▽1級-の4段階ある。宿泊を伴う旅行に同行できるのは2級以上の資格を持つヘルパーだ。平成18年の認定開始以降、全国に約600人おり、介護付き旅行専門会社「SPIあ・える倶楽部」(同)に問い合わせると、住居地の近くに住むヘルパーを紹介してくれる。

利用料金は要介護度によって異なり、半日で1万3千~1万9500円、1日で2万~3万円。トラベルヘルパーの交通費や宿泊費、旅行手配料などが別途必要となる。

同協会の篠塚恭一理事長(54)は「『家族に迷惑をかけたくない』と遠慮して外出や旅をあきらめる高齢者は少なくない。外の空気に触れることは気分転換になり、旅は生きる気力に結びつく」と訴える。

トラベルヘルパーセンター東伊豆(静岡県東伊豆町)では23年から、熱川温泉など伊豆の温泉を訪れた観光客を対象にヘルパーを派遣し、入浴の介助や観光への同行などのサービスを提供している。吉間(きちま)厚子代表は「温泉に入れると思わなかったとおっしゃる方も多い。3カ月に一度利用するリピーターもいる」とする。

神戸を活動拠点とするNPO法人「しゃらく」も、介助付き旅行サービス「しゃらく旅倶楽部」を20年から開始。同法人に登録する看護師やヘルパーが旅行に付き添う。

当初は年間十数人の利用だったが、今では個人旅行だけで約400人の利用があるという。同法人事業部の須貝静部長は「旅をすることでお年寄りが元気になる、という声が多く、年々ニーズが高まっている」と話している。




http://www.sankeibiz.jp/econome/news/160111/ecc1601111702001-n1.htm