【誤解だらけの沖縄基地】(1)中国が近海進出 どう対抗するのか?

「こういう視点で沖縄を見たことがありますか?」

東京・市谷の防衛省。幹部はテーブルに1枚の地図を広げ、記者に問い掛けた。一般の地図と南北が逆だ。沖縄諸島と中国南東部、台湾などが記されている。

「中国から東シナ海は、こう見えます。彼らにとって、太平洋への進出に沖縄本島、宮古、石垣のラインがいかに邪魔か。はっきり分かるでしょう」

幹部は饒舌(じょうぜつ)に語り、付け加えた。「だから、沖縄に基地が必要なんです」

中国は、南シナ海や尖閣諸島周辺などへの海洋進出を活発化させている。沖縄近海も頻繁に航行しており、本島と宮古島の間を通過し、太平洋に抜けるのが主なルートだ。防衛省が把握しているだけで、昨年12月も13日、22日、23日の3回、中国海軍の情報収集艦やフリゲート艦が本島-宮古島間を通過し、太平洋に出た。

幹部の主張は、こうだ。

中国軍が太平洋にアクセスする場合、必ず沖縄近海を通過する。沖縄周辺の抑止力が低下すれば、中国が海洋進出の動きを強めるのは必至だ。だから、在沖米軍基地は必要であり、普天間飛行場を名護市辺野古に移設せねばならない-。

こうした見方は、一般の国民にも広がっている。

「沖縄に基地がなければ、中国の脅威をどうするんだ」「普天間が沖縄からなくなると中国が攻めてくる」。ネット上には、こんな書き込みがあふれている。

ただ、中国の脅威と普天間飛行場の存在意義は、直接、結び付くのだろうか。

「中国の艦船や航空機の監視・警戒は、一義的に海上保安庁と海上・航空の両自衛隊の役割だ。在沖米軍でいうと海兵隊の普天間飛行場ではなく、主に空軍嘉手納基地の電子偵察機や対潜哨戒機などが任に当たる」

米軍に詳しい市民団体「リムピース」の頼和太郎編集長はこう話し、在沖海兵隊の役割は限定的との認識を示す。

「『中国の脅威があるから普天間を沖縄に置け』と言われるが、嘉手納と普天間の違いすら認識せず、基地問題を十把ひとからげに捉える議論ではないか」

なぜ、こうした認識が独り歩きするのか。頼氏は「歴史的に基地負担を抱えてきた沖縄県民と違い、本土では基地問題に関する理解度が低く、感情論が先行している」とみる。

沖縄側が辺野古新基地建設に反対すると、すべての米軍・自衛隊基地の撤去運動であるかのように誤解され「非現実的だ」と冷笑されることもある。

しかし、沖縄では嘉手納基地や、空自那覇基地、第11管区海上保安本部など、中国に対処する組織の撤去運動が広がっているわけではない。現時点で県民の大半が求めているのは、海兵隊の一基地である普天間飛行場の撤去だ。

頼氏は「本土側は沖縄を知る努力が、沖縄側には問題の発信を続ける努力が求められる」と提起する。

名護市辺野古の新基地建設阻止をはじめ、沖縄の基地問題が多くの誤解にさらされている。在沖米軍基地をめぐる論点を一つ一つ取り上げ、検証する。




http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=149167&f=i