徳島移転案、揺れる消費者庁

政府が進める政府関係機関の地方移転の一環として、消費者庁(東京都千代田区)を徳島県へ移転する案が議論されている。河野太郎消費者担当相は移転に前向きな姿勢を示しているが、消費者団体などから反対論が出ている。現状をまとめた。

「移転して司令塔の役割を果たせるのか」「緊急事態に対応できなくなる」−−。消費者庁の移転案に反対する緊急集会が先月、都内で開かれ、厳しい意見が相次いだ。移転案は、徳島県が要望したもので、河野担当相が先月に徳島県を視察した際、「非常に可能性のある提案」と発言したことなどから突如、現実味を帯び始めた。集会には消費生活相談員や弁護士らが参加し、「なんとしても移転阻止を」と声を上げた。

中央省庁を含む政府関連機関の地方移転は、地方活性化や災害時のリスク分散を目的に、政府の「まち・ひと・しごと創生本部」が検討を進め、今年度中に案をまとめる方針。消費者庁のほかにも文化庁(京都府が誘致)などが検討対象となっている。河野担当相は、徳島県に3月、試験的に板東久美子・消費者庁長官らを約1週間派遣する考えだ。

徳島県は消費者庁に加え、国民生活センターと内閣府消費者委員会の移転も要望している。県生活安全課の小椋昇明課長は「徳島は消費者の相談を受ける人材育成やインターネット環境の整備に力を入れている。消費者行政への意識は高い」と意欲を見せる。8日には飯泉嘉門知事が四国知事会を代表し内閣府を訪問。河野担当相に政府機関の四国への移転を求める要請文を手渡し、改めて消費者庁の徳島移転も要望した。

しかし、消費者団体などの反発は強い。消費者庁が2009年、それまで各省庁の縦割りだった消費者行政を一元化し、他省庁に事業者の指導・処分の徹底を求める「国民の側に立つ司令塔」として発足した経緯があるためだ。日本弁護士連合会は反対声明で「消費者庁に期待される機能は、極めて大きな権限を持つ(他の)省庁に対して消費者の視点からチェックを行い、修正を求め、時にはブレーキをかけるもの」とし「各省庁から隔絶されると消費者政策が停滞する」と指摘した。

物理的な課題も多い。同庁の業務は、国会での法案審議や他省庁との調整、事業者の検査・指導など、庁外とのさまざまなやりとりが必要だ。徳島県はテレビ会議システムの導入や同庁の東京分室を設置することで機能を維持できるとするが、対面で行ってきた交渉をテレビ会議に置き換えることや、出張費などのコスト増を懸念する声は庁内に根強い。

また、国民生活センターでは、相談業務資格を持つ67人(昨年12月現在)が相談員として勤務。地方の消費生活センターの相談員が国民生活センターの相談員に助言を求めるケースもあり、移転先で同様のレベルの人材を確保できるかも課題の一つだ。

移転案について、食やリスクコミュニケーション問題に詳しい唐木英明・東京大名誉教授は「お役所の仕事の多くはどこに行ってもできる。ただ国会からの呼び出しがあるため、一部の機能を残すためにも東京事務所は必要だろう。さらに事業者、国民、メディアがお役所に接するときに情報機器経由になることを納得し、協力することが移転の前提になる」と指摘している。




http://mainichi.jp/articles/20160109/ddm/013/010/004000c