化血研の“不正品”使用強いられる医療現場-厚労省、行政処分の一方で出荷再開容認

虚偽の製造指図書や製造記録を作成し、組織的隠ぺいを図ってきた-。厚生労働省は8日、血液製剤などの不正製造を行った化学及血清療法研究所(化血研)に110日間の業務停止を命じた。行政処分が下された一方、「在庫不足」を理由に承認書に基づかない製剤の流通が認められ、現場の医師らは患者に対し“不正品”を使用せざるを得ない状況に直面している。“正規品”が作れないにもかかわらず、なし崩し的に出荷再開を容認してきた厚労省や有識者の委員会も、こうした事態を考慮し、改善に向けた方策を探り始めた。

「代替品を使うことも検討に値する」。6日に厚労省で開催された薬事・食品衛生審議会血液事業部会の運営委員会。“不正品”の使用中止を視野に入れた対応が必要と主張する委員がいた一方、「製剤を変えることは患者の負担になる」などと製剤の切り替えに慎重な姿勢を示す委員もいた。

この日の委員会では、在庫不足が見込まれる3種類の血液製剤について、約8000本の出荷を認める案を了承したが、化血研への指示事項として、記録を保存することや出荷後の副作用の情報収集を徹底することなどが出荷案に盛り込まれた。約40年にわたって承認書と違った方法で製造を続けた化血研が、再び不正に手を染めないようクギを刺した格好だ。

化血研は国の承認を受けずに抗凝固剤「ヘパリン」を添加していたが、厚労省は「国の基準を満たした安全なもの」や「最終製品でのヘパリン残存量は定量限界未満」との文言を盛り込んだ出荷案を運営委員会に提示。「製剤の有効性に関連する活性については、化血研で確認されている」とする一方、化血研が提出した安定性試験データの資料は「委員限り」として公表することを避けた。

なぜ、厚労省は“不正品”の出荷を容認するのか。その理由は、出荷の停止・自粛が長引いた場合、化血研や医療機関などの在庫が尽きる恐れがあるからだ。不正製造の発覚後、化血研のインフルエンザワクチンや4種混合ワクチンが一部の地域で品薄となり、医療機関や自治体が予防接種の予約を中止したり、延期を呼び掛けたりする異例の事態に発展し、医療現場に混乱を引き起こした。

不正製造の影響は、B型肝炎ワクチンにも波及している。昨年12月ごろから「在庫が不足している」と予防接種の予約を中止する医療機関が続出した事態を受け、日本小児科学会は、医療施設での対応方法などの見解をホームページで公表。母子感染や針刺し事故後の発症の予防のためのワクチンを優先的に接種するよう呼び掛けている。

厚労省はB型肝炎ワクチンについても、出荷自粛の要請を解除する方針だが、抜本的な改善は見込めず、これまでと同じように“不正品”が医療機関に出回る公算が大きい。6日の運営委員会で出荷が了承された乾燥濃縮人血液凝固第IX因子「ノバクトM」のロットナンバー「SMH009」(2600本)の推定供給可能月数は1.8カ月間と短く、「次の供給を考えてもらわなければいけない」と厚労省の担当者らに苦言を呈する委員もいた。

化血研の不正製造を受け、一部の製剤については、競合している製造販売会社が増産体制を整えつつあるが、「代替品がない」(厚労省)ものもあり、今後も化血研に頼らざるを得ない製剤が少なからずあるのが実情だ。こうした課題をどう解決して安定供給につなげるのか。有識者の委員の知見と厚労省の手腕が問われそうだ。




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