大使館増 国民に負担 邦人15人の国も 効果に疑問の声

二十四日閣議決定された二〇一六年度予算案で大使館の新設が認められた四カ国の中に、在留邦人数が極めて少なく、日系企業も進出していない国が含まれていることが外務省への取材で分かった。国の長期債務残高が八百兆円を超える厳しい財政事情の中、専門家からは費用対効果の低い大使館新設を疑問視する声が上がる。

一六年度予算案に盛り込まれた新設国は、旧ユーゴスラビアのマケドニアと隣国アルバニア、インド洋の島国モーリシャス、南太平洋の島国サモアの四カ国。開設費用計八億六千万円が計上された。いずれも従来、近隣国の大使が兼務していたのを独立した大使館とする。

外務省によるとこのうちマケドニアに住む邦人は一四年十月時点で十五人で、現地で活動する日本企業はゼロ。大使館は小規模なものでも最低十五人の体制となるため、同国では日本の大使館員と在留邦人がほぼ同数となる見込みだ。他の三カ国の在留邦人もアルバニアが十七人、モーリシャス三十八人(一三年十月時点)、サモアが五十人(同)で、日本企業はそれぞれ一~三社にとどまる。

外務省の整備方針は大使館新設基準を「貿易や在留邦人、進出企業数を勘案、安全保障のための二国間関係や経済上の利益から総合的に判断する」とする。

一方で安倍政権は「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」との方針を掲げ、政権発足後の三年間で十一カ国での新設を推進。一六年度予算案が成立すれば、政権発足時に百三十四だった大使館数は百四十九に増える。

大使館は最小規模でも年間二億円の維持費がかかる。安倍政権下での在外公館の増加に伴い、維持費も膨張の一途。人件費や施設費など在外公館関連予算の合計額は一五年度は千二百九十九億円と、一二年度当初予算の千八十二億円から二百十七億円増えている。

外務省の整備方針は「大使館廃止は相手国から外交関係の深刻な後退と受け取られるため、原則実施しない」としており、廃止は事実上困難。大使館増設で膨らむ維持費は毎年、国民が負担することになる。

元外務官僚の浅井基文氏は、「今回の新設国は経済的に意味が見いだせない国ばかり。在留邦人も少なく、十年に一度起きるか起きないかの事案に対応するために毎年度二億円の税金を投じるなら、震災復興など国内で必要性の高い事業に充てるべきだ」と批判。天木直人・元駐レバノン大使は「一度大使館を開設すると財政負担が未来永劫(えいごう)生じることになり、費用対効果が見込めない国に作ることは許されない」と指摘する。

外務省は本紙の取材に、四カ国の大使館開設要求の理由を「総合的に判断した」と説明するにとどまった。

<大使館> 

各国首都におかれ、日本を代表し相手国政府との交渉、情報収集、広報文化活動、邦人の生命・財産の保護などを行う。似た機関として世界の主要都市に置かれる総領事館もあり、在留邦人の保護や広報を行っているが、相手国政府と交渉はしない。




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