児童施設で育った男性が自伝 同じ境遇の子と歩みたい

自動車メーカーの男性社員が、児童養護施設に預けられてから困難を乗り越え、同じ境遇の子どもたちのために新たな人生を歩もうと決意するまでをつづった自伝「キミはボク」を出版した。男性は「この本が子どもたちの希望になれば」と話している。 

男性は、三菱自動車名古屋製作所(愛知県岡崎市)で働く福島茂さん(31)。長崎市に生まれ、九人の子を連れて父親と事実婚した母親は、四歳の時に病死。五歳のとき、きょうだいで一人だけ児童養護施設に預けられた。

施設では自由がなく、上級生や先生から暴力を受けたこともあるという。「親に捨てられ、誰も味方がいない。一人で生きていこう」と心を閉ざした。

十八歳で高校を退学し、パチンコ店に住み込みで働き始めた。しかし、パチンコにのめり込み、借金を重ねることに。ついには職場の後輩の財布を盗んでしまった。

「あなたはそんな人じゃないはずや。目を覚ませよ」。パチンコ店は解雇されたが、後輩はそう言って示談にしてくれたという。「今まですべて親や施設のせいにして現実から逃げてきた。もう逃げてはいけない」。閉じた心に光が差し込んだ。

翌年、愛知県の派遣会社に就職。派遣先の三菱自動車名古屋製作所で仕事ぶりが認められ、二十三歳で正社員になった。

つらい時、気持ちを詩に書いて部屋の壁に張った。「苦しい時は空を見上げよう」「神様は乗り越えられない壁は与えない」-。それを見た同僚から「本にしたら」と勧められたのがきっかけで、自伝の出版を決意。四年間でA4判用紙約八十枚を書き上げた。

二〇一一年夏に知人の紹介で長野県小布施町の出版社「文屋」に持ち込み、今月、初版四千部の発刊にこぎ着けた。「過去を受け止め、同じ境遇の子どものために生かしたい」。タイトルにはそんな思いがこもる。

福島さんは年内で三菱自動車を退職する。故郷の九州に戻り、自分で児童養護施設を開設する夢に向かうためだ。当面は施設の職員として働きながら、一歩、一歩、具体化を目指す。

不遇な子どもたちは、大人につらさや寂しさに気付いてほしくて小さなサインを出している。「同じ経験をしたからこそ、ちゃんと見ているよと伝えたい。そうすれば子どもにとっての世界の見え方は全く違ってくると思う。その先に夢を見つけてほしい」

「キミはボク」は税別千五百円。アマゾンや書店で注文できる。問い合わせは、文屋=電026(242)6512=へ。




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