メンバー失踪? それとも水爆発言? 北朝鮮“ガールズ音楽団”、北京公演ドタキャンの真相は…

北朝鮮の女性音楽グループ「牡丹峰(モランボン)楽団」が、中国・北京で12日から3日連続で予定されていた公演を直前になって突然キャンセルし、帰国した問題で、その理由についてさまざまな臆測が乱舞している。中国国営の新華社電は「実務レベルでの意思疎通の欠如が原因」と伝えたが、韓国の聯合ニュースは北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)第1書記(32)が10日に水素爆弾の保有に言及したことで中国指導部が公演の観覧者の格を下げ、これに北朝鮮が反発して公演をやめたとの見方を示した。前例がないドタキャンは、中朝の雪解けムードに冷や水を浴びせた格好で、両国関係には再び暗雲が垂れこめそうだ。

牡丹峰楽団は、「文学と芸術分野で劇的な変化をもたらす」とした金第1書記の肝煎りで2012年に結成された女性十数人から成る音楽グループで、金氏が直々にメンバーを選抜したとされる。北朝鮮国内では圧倒的な人気を誇り、今回が初の海外ツアーとなるはずだった。

一行は北朝鮮軍の男声コーラス隊「功勲国家合唱団」も含めて100人以上で、朝鮮労働党宣伝扇動部の崔輝第1副部長が引率して10日に列車で北京入りした。11日には公演会場の国家大劇院でリハーサルも済ませ、本番を待つばかりだったが、12日午後、突然空港に移動し、高麗航空の専用機で帰国してしまい関係者を慌てさせた。

伏線はあった。北朝鮮国営の朝鮮中央通信は10日、金第1書記が平壌の平川革命史跡地を視察し、「今や私たちの祖国は自衛のための核爆弾と水素爆弾の爆音をとどろかすことができる国だ」と話したと報じた。これに対して中国外務省の華春瑩(か・しゅんえい)報道官(45)が11日の定例会見で「中国は朝鮮半島の非核化実現と、対話と交渉を通じた問題解決を一貫して主張している」と発言。北朝鮮側はこうした発言を「最高尊厳(金第1書記)に対する冒涜」と受け止め、金第1書記も激怒したとされる。

また、聯合ニュースによると、北朝鮮は当初、習近平国家主席(62)や李克強首相(60)の公演観覧を要求したが、中国側はこれに応じず、共産党の政治局員1人が観覧することで折り合ったという。しかし、金第1書記の水爆保有発言が伝えられると、中国は観覧者の格を次官級へ大幅に引き下げることを決定。報告を受けた金第1書記は怒りを一層募らせ、「鶴の一声」で楽団を北京から撤収させたとしている。チャイナ・デーリーなど一部の中国メディアは、牡丹峰楽団のレパートリーの中には北朝鮮によるミサイル発射や核開発を賛美する歌が含まれ、中国側が歌詞と演出方法の修正を求めたが北朝鮮側が拒否、キャンセルにつながったと分析している。

一方、中国海外反体制派サイト「中国ジャスミン革命」は、楽団のメンバー2人が失踪・逃亡し、事態を憂慮した金第1書記が公演中止と即時帰国を命じたと伝えたが、確認されていない。

かつて中朝は朝鮮戦争をともに戦い、「血の友誼(ゆうぎ)」で結ばれた同盟国と認め合ったが、ここ数年は北朝鮮の核開発、ミサイル発射などをめぐって対立し、関係は冷え込んでいた。しかし、今年10月に中国序列5位の劉雲山・共産党政治局常務委員(68)が訪朝して金第1書記と会談。伝統的な友好関係を強化していくことを確認し合い、関係改善の兆しが出ていた。

今回の牡丹峰楽団の北京公演は、再び全世界に友好ムードを見せる好機となるはずだったが、思惑ははずれた。来年中の金第1書記の初外遊となる中国訪問も一時確実視されていたが、ご破算になったとみられる。




http://www.sankei.com/premium/news/151219/prm1512190012-n1.html