在宅医療の強化打ち出す 診療報酬改定で基本方針

厚生労働省の審議会は二日、二〇一六年度からの医療の公定価格(診療報酬)を改定するに当たっての基本方針をまとめた。自宅で暮らすお年寄りらを支援する医療や介護の提供体制強化の必要性を強調。お年寄りのケアは「施設から在宅へ」という政府方針に沿った内容だ。だが、安倍政権は目玉政策の「一億総活躍社会」の実現に向けては、介護施設の拡充を打ち出した。在宅を支える「車の両輪」である医療と介護の施策がちぐはぐにみえる。 

基本方針は、慢性病を抱える高齢者を念頭に、在宅医療や訪問看護の充実を要請。日ごろの健康維持を担うかかりつけ医、服薬を管理するかかりつけ薬剤師の確保を促した。病気の重症化を防ぐ対策やリハビリを受けられる体制整備も求めている。厚労省は別の審議会の了承も得て最終的に方針を決める。

診療報酬は手術などの治療や医薬品などの公定価格で、原則二年に一回改定される。政府は充実させたい医療の価格を上げ、取り組む医療機関を増やすなどして必要な医療を確保する。今改定では在宅医療を重視する姿勢を鮮明にした。

背景には、人口が多い団塊世代の高齢化がある。すべての団塊世代が七十五歳以上となる二五年を見据え、政府は施設だけでは不足する受け皿づくりとして「在宅」に軸足を移した。一四年六月に成立した地域医療・介護総合確保推進法で動きを加速させ、在宅を支える医療と介護を連携させ、さまざまなサービスを提供できるよう体制整備を進めている。診療報酬改定も中核の一つだ。

一方、安倍晋三首相が議長を務める一億総活躍国民会議は十一月二十六日に公表した緊急対策で、二〇年代初頭までの介護施設などの整備案を、四十万人分から五十万人分以上に上乗せする目標を明記。来年の通常国会に提出する一五年度補正予算案、一六年度予算案に関連費用を盛り込む。

施設拡充は在宅重視の方針に逆行しかねず、施設が拡充されれば介護保険料の引き上げなど負担増も予想される。社会保障制度に詳しい日本総合研究所の西沢和彦上席主任研究員は「在宅医療を厚くしようとする診療報酬改定の方向は合っている」と指摘。「介護施設の拡充方針は、在宅重視の方針との整合性、自宅で生活したいと願う国民の希望との整合性、財政再建の実現との整合性がとれていない。首相は費用増など負の側面と合わせ説明すべきだ」と話す。




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