児童虐待 届かぬ通報 児相転送前に切るケース8割

児童虐待の情報が、児童相談所(児相)に届かない-。国が虐待情報の通報などのため、七月から導入した全国共通ダイヤル「189」について、児相に転送される前のガイダンス段階で、利用者が切るケースが首都圏の一部自治体で約八割に上ることが、本紙の取材で分かった。

通報に料金がかかり、児相につながるまでに時間を要する仕組みに不満が出ている。情報提供をした人が電話の途中で切ってしまうケースもあり、関係者からは改善を求める声が出ている。 

本紙は首都圏で児相を運営する一都六県と政令市五市、中核市の神奈川県横須賀市から、七~十月の189の状況を質問。このうち茨城、群馬、千葉、神奈川の四県と千葉、横浜、横須賀の三市から、189が児相までつながった件数と途中で切れた件数について回答があった。ほかの自治体は詳しい統計を取っていなかった。

回答によると、四県三市の管轄地域内であった189の計六千八十六件のうち、ガイダンス途中で切れたのは、81%に当たる四千九百二件。最も低い横須賀市でも62%。その他は70%に達し、最も高い茨城県では87%に上った。

利用者からは「児相につながるまでのガイダンスが長い」(神奈川県、横浜市など)という声が寄せられている。

固定電話の場合、利用者の市内局番と地域の児相の管轄地域が一致すれば、189を押すだけで、その児相に直接つながる。ただ、料金を説明するガイダンスなどもあり、順調でも一分近くかかる。さらに、携帯電話の場合、管轄の児相を特定するため、利用者がガイダンスに従って、居住地の郵便番号や都道府県の番号を入力しなければならず、長引きやすい。

料金は、電話した時間帯や架電先との距離にもよるが、三分あたり固定電話なら八・五円、携帯電話なら九十円かかる。

「料金が負担になる」(神奈川県)という声も寄せられており、「児相との電話の途中で、『お金がない』と切られ、被害児童が特定できず困ったケースもある」(千葉県)という。

NPO法人児童虐待防止全国ネットワークの高祖常子理事は「『虐待かも』と思った人が『面倒くさい』と途中で切るとしたら、導入の目的を果たしていない。善意の通報が本人負担なのはどうかと思う」と指摘し、簡潔なガイダンスなど改善を求めている。

厚生労働省の担当者は「導入されたばかりなので、試しにかけているケースもあるだろう。どういう理由で切るのか、実態を把握し、必要があれば改善を検討したい」と話している。

<全国共通ダイヤル「189」> 

児童虐待かもしれないと思ったときなどに、児童相談所に通報や相談できるダイヤル。従来は10桁の番号だったが、深刻な児童虐待が後を絶たない中、「いちはやく」の意味を込め、覚えやすい3桁にした。虐待を見たとか、聞いたという通報だけでなく、「育児がつらい」「育児に悩んでいる人がいる」といった相談も受け付ける。




http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015120390070522.html