老人ホーム入居権詐欺横行 親切心つけこむ売買話、巧妙

「あなたに老人ホームの入居権が当たった」「困っている人がいるので、名義を貸して」と高齢者にうその話を持ち掛け、現金をだまし取るニセ電話詐欺が相次いでいる。老人ホームの入所待ちが多い現状や、親切心につけ込もうとする手口とみられ、国民生活センターなどへの相談件数は年々増加。架空の施設のパンフレットを送りつけるなど手口も巧妙化し、警察やセンターは注意を呼び掛ける。 

東京都葛飾区の女性(71)に十月中旬、「老人ホームの入居権が当たりました。いらないなら当選しなかった人に譲ります」と、企業の社員を名乗る男から電話があった。女性が「そうしてください」と答えると後日、老人ホーム運営会社から「無事、名義変更が終わりました」と連絡が来た。

その後、最初の会社員の上司だという男から電話があり「あなたのやったことは名義貸し。違法行為で大変なことになった」「金融庁にも話が行っている。解決するにはお金が必要だ」と金銭を要求。企業も老人ホーム運営会社も架空だったが、女性はだまされた。

偶然にも、女性に電話があった直後、同様の事件を捜査していた警視庁がさいたま市と渋谷区の詐欺グループ拠点のマンションに踏み込み、詐欺未遂容疑で七人を逮捕。女性は難を逃れたが、男らの電話を信じた高齢者が現金をだまし取られたケースも十数件あり、被害は計一億一千万円に上っていた。

グループは「東日本大震災で東京に避難し入居権を求めている人がいる」とだますこともあった。捜査幹部は「親切心につけ込もうとする言葉を信じてしまう高齢者が多い」と話す。

厚生労働省の調査では、二〇一三年度の特別養護老人ホームの入所待機者数は約五十二万四千人。前回調査の〇九年度から約十万人増えた。

国民生活センターによると、老人ホーム入居権に絡むニセ電話詐欺の相談は、待機者増に呼応するように年々増加。一〇年度の七件が、一三年度はデータが残る十二月までで八十二件に。警察庁によると昨年、今年も同様の被害は多い。

自宅に偽物の老人ホームのパンフレットが届いた後で「入居権が当たった」と電話があり、信じてしまったケースや、「入居権を得るには保証金が必要だ」などとだます手口もある。

警察庁によると、入居権の購入や名義貸しの誘いを断っても「こちらで手続きをした」としつこく電話をかけ、解決金などの名目で金を払わせようとする強引なやり方も目に付く。

同庁の担当者は「入居する権利は貸し借りや売買するものではない。まして電話一本でやりとりするのはおかしい。不審に感じたら、家族や警察などに相談を」と話している。




http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201511/CK2015112302000123.html