報奨旅行者を取り込め! 台湾企業、数千人規模の道内ツアーも

社員のやる気を引き起こすため、企業が成績優秀者を招待するインセンティブツアー(報奨旅行)が観光関係者の注目を集めている。旅費や宿泊費は企業負担とあって、ツアー客が観光やお土産にかけるお金は多額だ。中でも台湾の企業のツアーは数千人規模で、経済効果が期待される。道内では、プロ野球日本ハムファイターズの試合観戦や始球式の「特典」を企画するなど、インセンティブツアーを積極的に取り込む動きが広がっている。

札幌ドームで9月中旬、日ハムのユニホームを着込んだ千人の台湾人が観客席を埋めた。台湾の保険会社「南山人寿」が企画したインセンティブツアーの一行だ。台湾出身の陽岱鋼選手の応援ボードを掲げ、打席に立つと大声援を送った。

南山人寿は9月上旬から10月中旬まで、社員3万7千人のうち、営業成績が優秀な6300人を道内に招待した。うち5300人は24グループに分かれて次々と来道し、4泊5日で小樽運河や旭山動物園を観光した。特に好成績を挙げた千人はVIP団として6泊7日で訪れ、日ハムの試合観戦も楽しんだ。

始球式のマウンドに立ったのはトップの成績を収めた李建昇さん(60)。「ご褒美」として記念の投球を行い、「こんな立派な球場で始球式を経験できて光栄です。温泉や食事も楽しみ」と興奮気味に話した。

杜英宗董事長(とうじちょう)(68)は「冬のスキー、秋の紅葉、夏のラベンダーと四季ごとに魅力がある。北海道を訪れたことがある社員も多いが、何回来ても楽しめる場所」と観光地・北海道を高く評価。「社員のモチベーションを上げるため、失敗にめげずチャレンジする陽岱鋼選手の姿を見せたかった。試合観戦は何よりの企画だった」と話した。

海外企業のインセンティブツアーは、自国や日本の旅行会社などに依頼するのが一般的。通常の民間観光ツアーや団体旅行と区別して集計できないため「総数の把握は困難」(観光庁)としているが、近年は増加傾向にあるようだ。

日本政府観光局(JNTO)が企業調査などでつかんだインセンティブツアーの訪日人数は、2014年度は12万3879人と、前年度比50%増に膨らんだ。訪日旅行専門のJTBグローバルマーケティング&トラベル(東京)によると、同社が14年度に手掛けたインセンティブツアーの訪日人数も前年度の約3倍と急増。同社は「東南アジアからのツアーも増えており、成長性のある市場」とみている。

JNTOの調査では、14年度の国別訪日人数の内訳は台湾が31%でトップ。これに韓国27%、タイ10%、中国9%と続く。JNTOコンベンション誘致部は「台湾は企業が社員を大事にするお国柄で、インセンティブツアーも大人数で訪れる。訪問先は調べていないが、食や自然が豊かな北海道の人気は根強い。社員のモチベーション向上のため、企業は常に社員が行きたい旅行先を選んでいる」とみている。

道内へのインセンティブツアーも件数の把握は困難だが、誘致に取り組む公益財団法人札幌国際プラザによると、同法人が関与した企業だけで本年度上半期(4~9月)に延べ25社の1万1862人が訪れた。人数は昨年度1年間の倍以上に達している。規模は1社数十人から数千人と幅があるが、やはり台湾の企業は1300人(4月)、2150人(5月)など、「大口」が目立つ。南山人寿の6300人は札幌で過去最大規模だ。

消費額の大きさもインセンティブツアーの特徴だ。観光庁の訪日外国人消費動向調査(14年)によると、観光・レジャー目的の消費額は1人14万6711円。インセンティブツアーは17万2391円と約2万6千円多かった。旅費や宿泊費は企業が出すため、お土産代などが「高額になりやすい」(観光庁)とされる。大丸札幌店では9月、免税手続きを行った台湾人旅行者への売上額が、前年同期比で約3倍に達したという。

経済効果が期待されるインセンティブツアーの誘致では企画に工夫が凝らされる。南山人寿の野球観戦を催した札幌国際プラザはこれまで、オフシーズンのスキー場を使った雪だるまの装飾コンテストや、会社のロゴ入りメロンを収穫できる果物狩りなど、独自の企画を売り込んできた。

来年度も香港や韓国から千人~2千人規模のインセンティブツアーが道内を訪れる予定だ。




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