育児・介護の「ダブル負担」家庭、晩婚化で増加…国が実態調査

子育てと親の介護を同時に担う「ダブルケア」家庭が増えている。背景には晩婚化・晩産化が進んだことがある。一方で、自治体による子育て、介護サービスは縦割りで連携に乏しく、十分な支えがない。実態を知るため、国は今年度、初めて調査に乗りだし、支援体制作りを始める地域も出てきた。

気がつくと、布団たたきをつかんで床に投げつけていた。涙があふれた。「一緒に遊んであげたいのに、この子にはいつも『待ってて』ばかり。悔しくて……」。滋賀県東近江市の女性(43)は、今夏、長男(4)の誕生日前に起きた出来事を振り返った。

プレゼントのビニールプールが届き、長男は「早く遊びたい」と喜んだが、自宅には寝たきりの母(71)もいる。訪問入浴が終わり、すぐに水分と栄養剤を補給しなければいけなかった。

「プールは明日にしよう」と言っても聞いてくれない。時計ばかりが気になり「お昼ご飯が終わったら晩ご飯を用意してお風呂に入れて」と考えるうちに感情が爆発。座り込む背中を笙君がさすってくれて我に返った。

そんな経験は一度ではない。不妊治療を経ての第1子だったが、出産時には母の介護が始まっていた。父(79)も要介護となり夫は単身赴任。育児と介護を福嶋さんが背負ってきた。「私が倒れたらどうなるの」

横浜国立大の相馬直子准教授らが、神奈川、京都など5府県で2012~14年に6歳以下の子を持つ母ら1894人に行った調査では、ダブルケアに「直面中」が8%、経験者は6%いた。

直面中は平均41歳。晩産化で子育てと介護の時期が重なったとみられる。「心身がつらい」「誰も助けてくれない」との訴えが多い。

また調査では、直面中の人の半数が仕事をしていた。

東京都の女性(40)は5年前に長女を出産後、働きながら近くに住む難病の母(65)を介護した。

仕事が終わると保育園に迎えに行き、その足で母の家へ。夕食を食べさせて自宅に戻り娘を寝かせる。その後も、母から「トイレ」と電話があれば、夫に娘を任せて自転車で駆けつけた。

3往復し、空が白み始めたこともある。それでも「仕事を失うと行き詰まる」と思い、会社へ向かった。

子育ては幼稚園や保育園、介護は介護事業所。市町村の担当部署も異なる。当事者からは「親の緊急時に子どもを預かってくれる所がない」「介護のデイサービスをもう少し長く利用できると、子育てしやすいのに」などの訴えが上がるが、市町村の窓口では子育てと介護は別の問題とされ、対応してもらえないのが実情だ。

そうした中、独自の取り組みが始まったのが横浜市。NPO法人などが集うダブルケアサポート横浜は10月、子育てや介護の専門職、区役所職員らを集め、サポーター養成講座を始めた。サポーターは、当事者に必要なサービスが、両面から受けられるよう助ける。

国も実態把握に取り組み始めた。内閣府は、ダブルケアをする女性数の推計作業を始め、今年度中にアンケートを行う。相馬准教授は「子育てと介護の両方に対応できる相談窓口やサービスなど、新たな仕組みが必要だ」と指摘する。(読売新聞大阪本社生活教育部 古岡三枝子)

◆晩婚化・晩産化

結婚年齢が高くなる晩婚化が進行し、平均は1980年の夫27.8歳、妻25.2歳から、2014年には夫31.1歳、妻29.4歳に上昇した。晩産化も進み、40歳以上で出産した女性は80年は約7000人だったが、14年には5万人を超えている。




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