頻発する高齢ドライバーの事故 運転から「卒業」させるには

高齢ドライバーによる事故がまた起きてしまった。軽乗用車を運転していた73歳の男性は認知症での入院歴があった。悲劇を防ぐ手立てはあるのか。

10月28日の昼下がり、宮崎市中心部で軽乗用車が700メートルにわたり歩道を暴走した。この事故で2人の命が失われ、4人が重軽傷を負った。運転していたのは、73歳の男性。過去に認知症で入院していたとされ、宮崎県警は持病との関連も含めて捜査している。

超高齢社会に突入した日本。65歳以上の運転免許保有者数は、29歳以下のそれを上回る。死亡事故の第1当事者となった運転者の総数に占める高齢者の割合は、2003年に14.9%だったのが、13年には25.4%と、年々増加している(警察庁調べ)。

現行法でも、認知症と診断されたら、運転免許証は返納しなくてはならない。75歳以上の運転者は、3年に1度の免許更新時に記憶力や判断力を測定する「認知機能検査」を受けることが義務付けられている。

だが、認知症のために自ら運転免許証を返納する人は少ない。今年6月に成立した改正道路交通法では、さらに対策が強化された。この認知機能検査で記憶力や判断力の低下がみられた人には医師の診断が義務付けられ、認知症と判断されれば免許停止か取り消しになる。

ただ、「75歳」という後期高齢者医療と同じ年齢での区切り方には、疑問の声もある。今回、宮崎で重篤な事故を起こした男性にしても、対策強化の網にかかる年齢に達していない。

警察庁の科学警察研究所で交通事故解析や鑑定に関わり、近年は高齢ドライバーの運転能力診断技術などの開発を手がける伊藤安海・山梨大学工学部機械工学科准教授は、こう指摘する。

「対策を講じる『75歳』という年齢の区切りに科学的根拠があるのか。運転と年齢、あるいは運転と認知症の相関関係をより明らかにしていく必要がある」

冒頭の事故を起こした男性は、病識があるのに運転を続けていたのだろうか。事実の解明はこれからだが、法的には医師が認知症などと診断した後、運転を続けている人を見つけた場合、都道府県公安委員会に届け出ることが可能だ。ただ、医師が届け出るかどうかは、「任意」とされている。

そもそも医師から認知症の診断を受けて免許を自主返納したにもかかわらず、返納したこと自体を忘れてしまう事例もあった。13年、引き留める家族を振り払って軽トラックのハンドルを握った長野県の男性(当時78)が、高速道を低速で走って追突され、一時重体に陥った。

こうした事例から浮かび上がってくるのが、運転に「赤信号」がともったとき、高齢ドライバーを「卒業」させることの難しさ。そして本人、家族の苦悩だ。

医師でもある、国立長寿医療研究センター長寿政策科学研究部の荒井由美子部長は、運転を継続する高齢者がいる場合、自身らが作成した「運転行動のチェックリスト」(詳細は以下に記載)などを手がかりに、本人とよくコミュニケーションを取ることが大切だと助言する。

「運転は単なる移動手段ではなく、その人の『生きがい』であることも多い。高齢ドライバーの場合、長年の運転経験がありますから、ご自身の運転技術に対する認識と、まわりの人の認識の違いを認めにくい。まずは、ご本人が納得いくまで話し合うことが大切です。ただし、家族だけで抱えずに、医師、ケアマネジャー、警察など、多職種で連携してほしい」

■高齢者が気をつけるべき運転行動のチェックリスト

定期的に、チェックリストの項目を確認してみましょう。一つでも、これらの行動がみられた場合には、「加齢の影響を受けはじめている可能性がある」と考え、より慎重な運転を心がけましょう。

(1)右左折のシグナル(ウィンカー)を間違って出したり、出し忘れたりすることがあ
(2)カーブをスムーズに曲がれないことがある
(3)歩行者、障害物、他の車に注意がいかないことがある
(4)危険な状況へのとっさの対応ができないことがある

(以上を、「いつもある」「時々ある」「あまりない」「全くない」でチェック)

出典:国立長寿医療研究センター長寿政策科学研究部の荒井由美子部長らによる

http://www.ncgg.go.jp/department/dgp/index-dgp-j.htm




http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151109-00000011-sasahi-soci