闇売買で広がるやせ薬マジンドール 依存性高く副作用も… 自由診療の穴くぐり安易な処方が横行

飲むだけで効果がある究極の「やせ薬」。多くの人がそんな期待をよせる薬がある。規制医薬品「マジンドール(商品名・サノレックス)」だ。この薬を不正に横流ししたとして、東京・六本木の開業医の男が逮捕された。薬はそもそも重度の肥満患者のための治療薬で依存性もあるが、実際には医師の裁量で簡単に処方できる。やせたいという現代人の欲望に乗じ、「夢の薬」は闇で売買されていた。

「サノレックスは最安値ですね」「サノレックスの口コミで知りました」。

実際に書き込んだのが誰かは不明だが、逮捕された医師が経営していた六本木の医院「アーバンライフクリニック」のサイト。のどから手が出るほど「やせ薬」がほしい客の声らしき文言が並んでいた。

サノレックスを横流ししていたとして、医師が麻薬取締法違反容疑で関東信越厚生局麻薬取締部に逮捕されたのは10月のことだ。

逮捕容疑は7月、マジンドール1万8千錠を中国人ら3人に約440万円で不正に販売したとしている。麻薬取締部によると、男は昨年から大量のマジンドールを仕入れ、中国人らに販売していた。中国人らも転売目的で購入していたとみられる。男は麻薬取締部の調べに対し、「金が欲しかった」と供述した。

男は、初診料なしで1錠350円で販売していたようだ。

《警告 1.本剤の主要な薬理学的特性はアンフェタミン類と類似しており…(略)…依存性について留意すること》

日本のサノレックスの添付文書には、赤字でこんな警告文が記されている。

厚生労働省になどよると、マジンドールは重度の肥満患者の食事療養や運動療法の補助薬として認可されている医薬品。成分が中枢神経に働きかけて満腹感をもたらし、摂取エネルギーの吸収を妨げるうえ、エネルギー消費を高めてくれる。

一方、覚醒剤と似た特徴があり、「飲んでいないとなにか不安」といった精神的な依存性が高い。このため麻薬取締法で向精神薬に指定されており、医師の処方がないと入手できない。医師は、患者の施用目的以外で譲渡することはできないことになっている。

マジンドールの不正販売をめぐっては、平成20年にも診療所やエステ店を全国展開する医療法人が大阪地検公安部に摘発される事件があった。医師免許のないサロン店長にサノレックスを販売させていたという。

そもそもマジンドールは高度肥満の治療に使われることが前提で、普通体形の人に投与するためのものではない。このため「保険診療」が認められるのは、BMI35以上の高度肥満患者だけなのだ。

ところがネット上には「150センチ42キロスタート」「今年中に50キロを切るのが目標です!」など、およそ高度肥満患者とは思えない利用者の書き込みが並んでいる。保険はきかなくても医師の判断で処方される「自由診療」が広がっている実態が伺える。関係者によると、内科や美容外科で安易に処方されている実態があるという。

麻薬取締部の担当者はマジンドールについて、「覚醒剤の代替物として利用する人は少なく、純粋にダイエットのためほしがる人が多い」とみる。そのうえで、「医師は基本的には患者の健康状態をみて処方の可否を決めるべきだが、患者が求めれば明確な制限はなく処方できてしまうのが実情」と指摘。自由診療が悪質な錬金術になってしまうかはひとえに医師のモラル次第のようだ。

ネットの書き込みには「3日目でひどい鬱症状」「倦(けん)怠(たい)感、吐き気に襲われダウン」「健康的とはいえません」といったものもあった。

薬物に詳しい小森栄弁護士は「自由診療の名の下で頻繁に向精神薬を処方している医師が、どこまで患者のリスクを真剣に検討しているかは未知数」と指摘。「向精神薬は健康に一定のリスクを伴う。向精神薬と自由診療の問題は医学界で検討を進めるべきだ」と話している。




http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151107-00000516-san-soci