うまい泡盛、でも飲み過ぎは重大リスク

日本中どこでも問題になっていると思いますが、アルコールは南大東島でも大きな問題です。何が問題かというと、危険な事故に直結するからです。島でも自動車の飲酒運転で自損事故を起こしそのまま亡くなった方や、海に落ちてしまった方などさまざまな不幸な事例があります。

診療所医師として大きな問題だと感じているのは、飲酒後の転倒事故です。大抵、未明の午前1時ごろに、「人が血だらけになって倒れている」という電話がかかってくることから始まります。慌てて診療所に行って待っていると、頭から血を流して泥酔している患者さんが付き添いの人と一緒に現れます。多量のアルコール摂取は痛みを和らげ、病気やけがの他の症状を弱めてしまうため、時として大きな病気を隠してしまうことがあります。しかし患者さんに話を聞いても、ろれつがまわらず正確な病歴を取ることができません。さらに付き添いの方も何がおこったのかよくわかっていないことが多いのです。

さらに重大なことは、南大東診療所の医療従事者は医師、看護師の2人しかいないにもかかわらず、このような多量飲酒の患者が発生し、その受傷機転(いつ、どこで、どのようにしてけがをしたのか)がわからない場合は、診療所に留め置いて経過観察をせざるを得ないことです。ほとんどの場合何も起きないのですが、大きな見逃しを避けるためにも、本人が歩けるようになるまで診療所で徹夜して経過を見ることがあります。

こうしたアルコールの問題は、離島でも対応が難しくなってきていると感じます。最初にぶち当たるのが「少量なら健康に良い」という言葉。多くの方が飲み過ぎを指摘すると、この言葉をおっしゃいます。しかしこの「少量」というのがミソで、島のほとんどの飲酒者にこの言葉は当てはまりません。さらに「自分はお酒をどれだけ飲んでも大丈夫」という認識を持っている方も危険です。実際に泥酔して診療所に運ばれてくる方の大半が、そういう認識で生活しており、けがをしてから酔っていたことに気付くのです。アルコール自体の依存性も大きな問題です。科学的に一部の麻薬や覚醒剤よりも依存性は高いことが分かっており、その酒量を減らした時に出る離脱症状も強く、減らしたり止めたりが非常に難しいのが、アルコールなのです。

現在、島では村や保健師の方々の努力で、沖縄本島の専門医と連携をとり、診療所も協力しながら、アルコール依存症の方への対応を行っています。診療所が問題を抱えている人に声かけをし、保健師に介入してもらいそれをアルコール依存症の専門医と相談しながら継続していくという形をとっています。何十年もかけて出来上がった飲酒習慣をすぐに解決することは困難ですが、現在、島全体で協力しながらその解決の一歩を踏み出しています。今後アルコール依存の問題が一歩一歩前進するように診療所医師として取り組んでいきたいと考えています。

太田龍一

沖縄県立南部医療センター付属南大東診療所長

おおた・りゅういち 

大阪府出身。2004年大阪市立大学医学部入学。同大学卒業後、10年から沖縄県立中部病院プライマリケアコースで研修。13年から現職。人口約1400人の南大東島で唯一の医師として、島民の日常的な健康管理から救急医療までを一手に担う。趣味は読書とランニング。毎年秋に開かれる島の運動会、駅伝大会への参加を目指し、鋭意トレーニング中。





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