暴力団と接骨院共謀で診療報酬を不正受給か 組長ら逮捕へ

暴力団組員を接骨院で治療したように見せ掛け、自治体が運営する国民健康保険(国保)組合から診療報酬を不正受給していた疑いが強まり、警視庁は六日、詐欺容疑で、東京都杉並区の接骨院の経営者の男(35)や指定暴力団住吉会系の組長(49)ら十数人の逮捕状を取った。同日にも逮捕する方針。

警視庁は、暴力団が首都圏の美容内科や歯科医院とも共謀し、同様の手口を繰り返したとみて捜査。患者役には組員のほかお笑い芸人も含まれ、合計百人以上が関与した疑いがあるという。だまし取った診療報酬は接骨院では二〇一一年以降で百万円以上、他の医療機関も合わせると総額一億円以上とみており、その一部は暴力団の活動資金になっていた。

捜査関係者によると、組長らが組員らに「小遣いをやるから行け」などと接骨院に行くように指示。接骨院側は、うその治療内容をレセプト(診療報酬明細書)に記入して国保組合に提出し、診療報酬を得ていた。組員らは知人も勧誘して接骨院に通わせ、だまし取った金の中から報酬を渡していたという。

◆レセプト審査の甘さ悪用

住吉会系暴力団が医療機関などと共謀し、多額の診療報酬をだまし取っていた疑いが警視庁の捜査で明らかになった。背景には、医療機関などが診療報酬を得るために国民健康保険組合に提出するレセプトの審査の甘さがある。暴力団に対する警察の取り締まりが厳しくなる中、審査を擦り抜けて不正に資金を集めようとする実態が浮かんだ。

国保は、会社員や公務員以外の主に自営業者らが加入する健康保険。患者が診療報酬の一~三割を負担し、残りは医療機関などが国保組合に申請して受け取る。

レセプトは国保組合に提出される前に、保険組合が運営する審査機関でチェックされるが、今回の事件では虚偽を見抜けなかった。東京都にある審査機関の担当者は「病名と診療内容さえ合致していれば、うそだったとしても見抜けない。あくまでも、医療機関が正直に申請していることを前提にした審査だ」と説明する。

また都内のある区の国保担当者も「『医師はうその請求をしない』という性善説で成り立っているシステムだ」と語った。

厚生労働省は二〇一三年度、全国の医療機関や薬局などが受け取った診療報酬のうち、計約百四十億円が不正受給に当たるとして返還を求めた。その多くは審査機関でのチェックで判明したのではなく、内部告発などがきっかけだった。

国保制度に詳しい淑徳大の結城康博(ゆうきやすひろ)教授(社会保障論)は「患者一人一人にレセプト通りの診療を受けたかを審査機関などが電話で確認すれば、不正をあぶり出せるが、膨大なコストがかかって難しい」と指摘している。 

<レセプト(診療報酬明細書)> 

患者を診察したり治療したりした医療機関などが、国民健康保険組合や企業などの健康保険組合から診療報酬を受け取る際に必要な明細書。患者の病名や診療内容、診療報酬点数(1点=10円)などを記入し、各健康保険組合に提出する。審査機関を通じて適正と認められると、患者の負担分(1~3割)を除いた診療報酬が医療機関などに支払われる。




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