ロシア:記録的な石油増産 政権苦境の可能性も

昨年後半からの原油安が長引く中、税収を確保したい政府の意向を受けたロシアの石油会社が記録的な増産を続けている。ただ、ウクライナ問題を巡る米欧の対露経済制裁によっての新規の大規模投資は難しくなっており、中期的には減産に転じる見通しだ。資源大国ロシアでは、エネルギー資源の輸出収益が国家財政に直結している。プーチン政権は苦境に陥る可能性もある。

河川輸送の大動脈・ボルガ川に臨むサマラには、石油製品を黒海方面へ運ぶタンカーが集まる。広大なボルガ・ウラル油田を背にしたソ連時代からの一大工業都市だ。国営石油大手ロスネフチ社系列の船運会社プライム・シッピングのタンカーに乗船し、重油積み込みの現場を取材した。

「秋は霧や降雪、強風など悪天候が多い」。この道40年のアレクサンドル・サフチェンコ船長(60)は川面をじっと見つめながら語った。積み込み施設が近付くと矢継ぎ早に船員へ指示を出し、慎重に接岸した。

ボルガ川から運河経由でドン川へ入り、アゾフ海を抜けて黒海へ至る約1500キロの長旅だ。その先は大型タンカーに積み替え、欧州などへ運ばれる。

原油価格(国際指標の米国産標準油種)は昨年7月には1バレル=100ドルを超えていたが、現在は50ドルを下回っている。一方で、ロシアの昨年の石油生産量は5億2675万トンと1991年のソ連崩壊後では最多を記録し、今年もその勢いは衰えていない。

ロシア政府は歳入の約5割を石油とガスの税収に依存している。ロシア通貨ルーブルの対ドル相場が下落していることで、原油安の打撃はある程度緩和されるが、それでも影響は深刻だ。ロシア政府は緊縮財政を強いられており、来年度予算では「聖域」とみられてきた国防費も削減される見通しだ。

ロシアのエネルギー問題専門家、ミハイル・クルチーヒン氏は、7月のイラン核合意や米国でのシェールオイル開発などを背景に原油価格の低迷が10年は続くと見ている。

同氏はさらに「石油会社は目先の収益を上げることに躍起で2〜3年先のことを考えておらず、探査や試掘への投資も減らしている。来年にも生産量は縮小に転じる」と指摘。ロシア政府は油価低迷と生産減のダブルパンチに見舞われる恐れがあるという見通しを示した。




http://mainichi.jp/select/news/20151031k0000e030210000c.html