「やせ薬」不正販売の疑い 六本木の開業医逮捕

東京・六本木のクリニックの開業医が、肥満の治療薬を不正に販売したとして麻薬及び向精神薬取締法違反の疑いで厚生労働省の麻薬取締部に逮捕されていたことが分かりました。この薬は「やせ薬」として利用されている実態があるとみられ、麻薬取締部は監視を強めています。

逮捕されたのは、東京・六本木でクリニックを開業していた医師、澁谷雅彦容疑者(57)です。

厚生労働省の関東信越厚生局麻薬取締部によりますと、澁谷医師はことし7月、向精神薬に指定されている薬、「マジンドール」1万8000錠を中国人ら3人に合わせて440万円余りで不正に販売したとして、麻薬及び向精神薬取締法違反の疑いが持たれています。

この薬は、中枢神経を刺激することで食欲を抑える効果がありますが、覚醒剤と似た特性があり依存性があるとされるため、厚生労働省は通常、重度の肥満患者にのみ処方することを認めています。しかし、保険が適用されない自由診療では医師の判断で処方でき、「やせ薬」として利用されている実態があるとみられ、麻薬取締部は不正な転売などに監視を強めています。

麻薬取締部によりますと澁谷医師は、去年から「マジンドール」を大量に仕入れ、中国人らに横流しして、およそ5000万円を稼いでいたとみられ、調べに対し、「金もうけがしたかった」と容疑を認めているということです。麻薬取締部は、薬を購入した中国人らによって国内のほか中国の富裕層向けにも転売されていたとみて調べています。

3割が美容目的で使用か

逮捕された澁谷医師はクリニックのホームページで「小顔ダイエット」、「モデルやタレントの駆け込み寺」などとマジンドールの“やせ薬”としての効能をうたっていました。

マジンドールは、食欲を抑制する向精神薬として国内で唯一、健康保険の適用が認められていますが、覚醒剤に似た特性があり依存性があるとされるほか、不眠や頭痛などの副作用も報告されています。このため厚生労働省は身長1メートル70センチで体重100キロ程度といった重度の肥満患者にのみ処方することを認めていますが、保険が適用されない自由診療では医師の判断で処方できます。

製造・販売元によりますと、年間の流通量はおよそ600万錠に上り、このうち3割が美容の目的で使われているとみられるということです。治療の必要性が高くない人たちの間で「やせ薬」として利用されている実態があるとみられ、平成20年には東京のエステサロンを経営する医師が、診察せずに薬を処方させていたとして医師法違反の疑いで逮捕され、有罪判決を受けています。

一部を中国に送っていたか

今回の事件ではマジンドールを購入した中国人ら3人も不正に販売する目的で薬を所持していた疑いで逮捕・検挙されました。

麻薬取締部の調べに対して逮捕された中国人の1人は「中国のセレブ層にダイエット薬が人気で高く売れると思った」と供述し、一部を中国に送っていたとみられます。中国では、日本の薬は品質が高く安全だとして人気があるということで、麻薬取締部は今後、中国の富裕層などに向けて薬が横流しされるケースが増えるおそれがあるとみて監視を強めています。

日本の市販薬 中国で「神薬」

中国のインターネット上には、日本製の薬を入手して販売するサイトがあり、今回不正に転売されていた「マジンドール」も売られています。サイトでは、10錠で日本円にして6700円ほどで売られていて、ダイエットのための安全な薬として即効性があり体重が元に戻ることはないなどと宣伝されています。

また、販売する「マジンドール」が肥満患者のために医者から処方された薬だと強調している一方で、販売する担当者によりますと、購入者が医者から処方を受ける必要はないとしています。サイトには「新陳代謝が良くなったため、すごく汗が出た。確実に痩せていく感覚がある」とか、「これまで減らなかった体重が減少し始めるようになり、とてもうれしい」など匿名の利用者の意見が紹介されています。

中国では、経済成長に伴って食生活が豊かになり、「肥満」や「太りすぎ」の人がおよそ3億人に上るという調査結果もあるなど、肥満が社会問題の1つになっています。

中国では、日本の市販薬が、安心で品質が高い「神薬」と呼ばれ、日本を訪れる中国人観光客のいわゆる“爆買い”で人気が出る中で、日本製の「マジンドール」も人気が出ているものとみられます。




http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151026/k10010282691000.html