合葬墓 高まるニーズ 石川初 内灘に公営整備へ

多くの遺骨を一つの墓に合同で埋葬する「合葬墓」が増えている。一般に運営者が永久に管理する墓で、石川県内では内灘町が十二月、公営で初めて整備する。核家族化で墓の継承に不安を抱える人が増える中、家族観や死生観の多様化も相まって注目を集めている。

「子どもに迷惑を掛けたくないから申し込む」。内灘町内の男性(50)は、いずれ自分の墓を建てるつもりだったが、合葬墓に応募する意志を固めたという。三人の子どもに恵まれたが、二十代の息子二人は独立して東京都内で生活。海外留学中の十代の長女も帰国後は都内に進学し、帰郷の予定はない。男性は「遠くに住む子どもたちに墓の管理を頼むつもりはない。合葬墓に抵抗もない」と話す。

内灘町の合葬墓は、町霊園の一角五百十平方メートルに整備。三百体の遺骨を骨つぼの状態で納める納骨室と骨つぼから出して六百八十体を合同埋葬する埋蔵室を造る。納骨室の遺骨は十年後に埋蔵室に移される。遺骨と直接向き合うことはできないが、献花や礼拝のための空間を設ける。使用料を一度納めれば、その後の負担はない。

全日本墓園協会(東京)の横田睦・主任研究員によると、全国では一九九〇年代から合葬墓の建設が本格的に始まった。二〇〇五年には報道やインターネットなどで把握した分だけで約五百五十カ所に上り、現在は八百カ所あるという。

こうした全国の先例を参考に、町は約三年前から整備を検討。二年前には町内の高齢者世帯に需要をアンケートした。結果は「希望しない」が58%に上った一方で「希望する」も34%に。町は「一定のニーズがある」と判断した。整備計画公表後は「早く造ってほしい」などと月に最大十件の問い合わせがあり、関心の高さをうかがわせる。町は来春に申し込みの受け付けを始める方針だ。

北陸では、富山市が〇七年、富山県上市町が一二年に合葬墓を整備している。富山市では今年三月末時点で、合葬墓で収蔵可能の上限一万体のうち五百四十三体、合葬墓への収蔵前に遺骨を最大十年間保管する参拝壇で同千四十七体のうち四百二十九体が申し込みで埋まっている。

公営の合葬墓は一般的に宗教法人などが運営するものと比べて使用料が安く、住民が広く応募できる。横田氏は「公営の合葬墓は、さまざまな事情で墓を建てられない人へのセーフティーネットといえる」と指摘した上で、「墓の選択は、墓に入る自分の気持ちだけでなく、故人をしのぶ残された人たちの気持ちも考えて、慎重に決めるべきだ」と話している。

墓の不継承は無縁墓の問題に直結する。第一生命経済研究所(東京)の小谷みどり主席研究員が2009年に「自分の墓が無縁墓になる可能性」を全国の600人に聞いたところ、「いつかは」「近いうちに」の回答が54.4%に上り、「ならない」の13.9%を大きく上回った。子どもがいる人でも52.7%が無縁墓になる可能性があると考えていたという。

小谷氏は著書「だれが墓を守るのか」(15年岩波書店)で、墓の「無縁化」は人口の流動化で継承者がいても放置されれば起きるとして、子どものいない人や未婚の人だけの問題ではないと主張。「死者を無縁化させない仕組みの構築が安心して死を迎えられる社会の実現につながる」と指摘している。

福井県敦賀市は、市有墓地にある墓の約半数の管理者が把握できなくなっており、管理上の問題から将来的に無縁仏として合葬することも検討している。




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