「食の安全」自衛に限界も 海外産の検査すり抜け懸念

環太平洋連携協定(TPP)で農林水産物の八割以上の関税が撤廃されることになり、より多くの外国産の食品が流入することが予想される。安い食品を使えば外食や食品加工業界は原材料費を抑えることができる。ただ、残留農薬や食品添加物など、食の安全を不安視する消費者も多く、すでに自衛策をとっている大手企業もある。 

政府は「TPPに日本の食品表示基準を変更する規定はない」と説明する。日本の消費者が気にする遺伝子組み換え食品については、大豆やトウモロコシなど八種類の農作物と、これらを材料につくった豆腐や納豆、スナック菓子など加工食品は、遺伝子組み換え作物を使っているかどうかの表示義務がすでにある。

ただ、食品表示法に基づく表示義務は容器や包装が対象で、レストランやファストフード店には規制がない。主婦連合会の山根香織参与は「外食ではメニューに詳細に材料の表示がしてあるわけではないので、消費者は安全かどうか確かめられない」と話す。東大大学院の鈴木宣弘教授も「成長ホルモンを投与した牛肉など、体に害がある食材を使う外食チェーンや加工会社は増えてくるだろう」と心配する。

検査体制への懸念もある。二〇一四年度は二百二十二万件の輸入の届け出があったが、全部検査をするのは無理。約二十万件を抽出検査したところ、八百七十七件の違反があった。農薬の基準を上回っていた食品のほか、国内で承認されていない遺伝子組み換えのパパイアなどがあったという。輸入量が増えれば検査を擦り抜けてしまう食品も増えるだろう。

これまで国内ではマクドナルドの期限切れ肉の使用問題や事故米の不正転売事件など、食をめぐる問題がたびたび起きて、消費者の食の安全への意識はますます高まっている。外国産を使うことで消費者の信頼を失ってしまうことを恐れる企業は多い。

「消費者の国産への信頼感は強い。TPP発効後は安い産地の食品を使うかもしれないが、不安をなくすのに苦労するかもしれない」と話すのは、牛丼チェーン「すき家」などを展開するゼンショーホールディングスの担当者。すき家で使っている牛肉はすべて米国、豪州、メキシコからの輸入肉。十年前に食品安全の専門部署を設けて、肉のほか、魚や野菜なども残留農薬や遺伝子組み換え、重金属などの検査をしている。

流通大手のイオンも輸入品を含む食品の検査を自主的に行い、保存料や着色料などの添加物や残留農薬を調べている。「国産でも外国産でも、検査して安全と判断した物なら産地は問わない」と担当者は話している。

TPPの発効後、企業には今まで以上に食の安全を守る取り組みが求められることになるが、ある外食産業の関係者は「食材の調査などはノウハウや資金力のない企業には難しい」と問題点を指摘している。




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