普天間移設 国と県、法廷闘争へ 注目は3つの論点…環境保全、知事裁量、日米合意

翁長雄志知事が辺野古の埋め立て承認を取り消したことで政府との訴訟が現実味を帯びる。(1)環境保全(2)知事裁量(3)日米合意-という法廷闘争の論点を検証すると、翁長氏の主張は説得力を持つとはいいがたい。防衛省が取り消しを違法と断じ、法廷闘争にも自信を示すのに対し、翁長氏の頼みの綱は世論戦だ。

翁長氏が取り消しの根拠にしたのは承認に瑕疵があると結論づけた県有識者委員会の報告書だ。報告書の指摘のうち、環境保全措置と辺野古沖埋め立ての合理性の2点に絞り込んだ。

防衛省に提出した通知書は、環境保全措置はウミガメやサンゴ礁、ジュゴン、米海兵隊オスプレイの騒音について埋め立てに伴う影響評価が的確ではなく、保全措置も不適切と指摘した。

しかし、これに反論できる措置を防衛省は講じている。環境影響評価の段階で当時の仲井真弘多知事は平成24年3月、防衛省が評価書で示した措置では環境保全は不可能との意見を提出。それを受け、防衛省は海洋生物や工学、騒音など幅広い専門家9人を集めた研究会を9回開いた。その上で、専門家の意見を反映した評価書を再提出し、仲井真氏から埋め立て承認を得た。再提出した評価書はウミガメから騒音に至るまで影響評価や対策を補正しており、「専門家9人のお墨つきを得た」(政府高官)ものだ。

その一方で、県有識者委は環境などの専門家は3人だけで残り3人は弁護士。承認審査に関わった県職員1人に対するヒアリング結果をもとにまとめた報告書も客観性に欠けるとされ、この点が訴訟でどう判断されるかが焦点となる。

また翁長氏の主張は、瑕疵を見過ごしていたのはだれかという点でも筋が通らない。9月県議会で、県側は担当の県職員が適切な承認審査を行ったとの立場で答弁しており、有識者委報告書が審査を不十分と明記したこととの矛盾が明らかになっている。「審査が不十分なら職員の処分をしなければいけないが、翁長氏は処分を考えていない」(県関係者)という。

審査が適切と認めるのであれば、承認した仲井真氏の判断が不適切だったと強弁せざるを得ないが、これも無理がある。

仲井真氏は職員に「自然体で淡々と審査を」「環境面は一番厳しい基準で」と指示し、職員は審査基準に適合していると報告した経緯があるからだ。

翁長氏が、反対意見をくんで仲井真氏は知事裁量で不承認にすべきだったと主張することも想定される。

ただ、政府の埋め立て事業は公益性があり、承認に関する知事裁量は「極めて小さい」というのが政府見解。審査に適合したと報告を受ければ承認するのが当然で、仲井真氏が政治的意図などで不承認としていれば裁量の逸脱、権限の乱用にあたり違法でもある。

政治的意図に基づく翁長氏の取り消しが違法とされるのも同じ理由からだ。

翁長氏は辺野古移設による海兵隊の抑止力維持についても疑問視し、移設は合理性・必要性の要件を満たしていないとして瑕疵と指摘したが、辺野古移設は日米合意だ。その高度な政治性を踏まえ、訴訟では日米安保条約をめぐる統治行為論のように司法判断が回避される可能性もある。

承認取り消しという最大のカードを切ったことで、翁長氏に有効な対抗策はなくなった。このため、来年1月の宜野湾市長選で辺野古移設阻止を掲げる候補者の当選に向けて求心力を維持しようと、県民投票と再度の知事選に打って出るとの観測も浮上している。




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