セブンとアマゾンが変えるスーパーのあり方 リアル、ネット問わない流通戦争の始まりだ

売上高6兆円のセブン&アイ・ホールディングス。全世界で売上高10兆円超、日本だけでも約1兆円を誇るアマゾン。日本の流通市場で大きな存在感を放つ2巨頭の本格参入を軸に、日本のネットスーパーが新たな局面を迎えつつある。

セブンは2015年11月に「オムニセブン」と称するサービスを始める。セブン-イレブンやイトーヨーカドー、そごう・西武などグループ各社の商品をネットで買えるサービスで、当初の取扱品数はなんと180万点。物流ルートも独自システムを活用し、極限まで効率を高める。寿司などの商品はなんと、積載の30分前に調理するという。セブンは2018年度までにグループにおける通販の売上高を現在の6倍超の1兆円規模まで引き上げる腹づもりで、ネット通販首位のアマゾンジャパンを猛追する。

一方のアマゾンジャパンは9月、ネットスーパーへの本格参入を表明した。まずは首都圏を中心として食品の配送サービスを開始。生鮮食品を除くとはいえ、5000品目を揃え、プライム会員向けにスーパー並みの価格設定で提供する。すべてが当日配送とまではいかないものの、段ボール一箱の配送量が290円というから、重い商品の買い物時には重宝するだろう。

セブン、アマゾン以外の陣営の動きを整理しておこう。このところネット通販で急成長を遂げている小売り企業のひとつが家電量販大手のヨドバシカメラだ。取扱品目は家電に限らず、書籍、食料品、日用品、化粧品など400万点弱に及ぶ。自社で担う送料無料、最短6時間の”爆速”配送が魅力だ。一部報道などによるとネット通販売上高は約800億円で、今年度は1000億円に達する見込みだという。

そのほかローソンは楽天と提携し、商品をローソン店舗で受け取れるようにしたし、佐川急便と組んで個々の家庭に御用聞きサービスを広げようとしている。楽天は、8月に「楽びん!」も開始した。これは都内の限定されたエリアではあるものの、飲料やお菓子などの500点弱の商品を20分以内に届けるといったものだ。

これまで多くのスーパー各社がネット配送事業に参入したものの、規模が拡大しないために中途半端な展開にとどまったり頓挫したりしていた。ピッキングや配送は手間と固定費がかかり、やるならば大規模に事業展開しなければ採算が合わない。たとえば、大手スーパーのライフコーポレーションは3年前に実験的に参入したものの、本格展開に踏み出したのは2015年になってからだ。

そして、ここにきて、アマゾンとセブンの参入だ。現在ネットを使ったスーパー事業の規模は、一部報道によると1200億円程度とみられる。食品スーパーの市場は全体で14兆円。仮にそのうちの1割をネットスーパーが担うとしても1.4兆円。ネットスーパー市場は、まだまだ伸びしろが大きい。

コンビニ、スーパーを中心としたリアル小売業の世界でイオンに並ぶ巨大なネットワークを持つセブンと、ネット通販の分野で確固たる地位を築いてきたアマゾンが取り組みを本格化すれば、ネットスーパー市場は一気に拡大する可能性がある。日本におけるスーパーのあり方そのものが変わってくるかもしれない。

そもそもネットスーパーの現代的意義はどこにあるのだろうか。

まず日本では地方都市を中心に深刻なほど商店街がシャッター通りと化し、さらに小規模商店が消えている現状がある。確かに郊外にショッピングモールがあれば家族連れは週末に楽しめるだろうが、高齢者はそうはいかない。車を保有しない65歳以上のシニア=買い物弱者は全国で約400万人に至る。その数は増えることはあっても、減ることはない。このまま進めば、10年後には600万人を突破するだろう。

そう考えると、ネットスーパーは、単にネットを使った便利な買い物ツールにとどまらず、シニアの買い物支援という意味で社会的な存在意義がある。まだまだシニアのネット利用者が低いことは問題ではあるものの、各社とも現在「オムニチャネル化」を進めており、それがひとつの解決策になるだろう。

オムニチャネルとは、実店舗やネット、そのほかの販売場所を、独立して考えるのではなく統合したうえで顧客との接点をもつ試みだ。たとえば、せっかく実店舗に行っても望みの商品が品切れしているケースもある。そのときに、即時に他店舗と在庫情報を共有したり、また代替手段としてネットで注文ができたりするようになる。

たとえば、シニアが実店舗に行き注文し、それを自宅で受け取られるようになるし、その注文データをもとに次にはネット店舗から派遣された”御用聞きサービス”が日用品を届けてくれるようになる。

かつては移動式スーパーや、シニアをリアル店舗に運ぶバスなどがその役目を果たしてきた。もちろん、シニアにとって憩いの場ともなりうる実店舗に意味が薄れてきたとはいえない。ただ、ネットスーパーはシニアの買い物を変える一手段として存在感を増そうとしている。

ではリアル店舗とネットスーパーのすみ分けは、はたしてどうなるのだろうか。

そもそもの問いの立て方が間違っているのかもしれない。オムニチャネル化は、すべての販売チャネルをシームレスにつなげるものだとしたら、リアル店舗とネットの区別は融合していかざるをえない。

西友の取り組みはそれを象徴している。リアル店舗における商品陳列と、ネット配送の商品在庫の違いは、西友においておぼろげだ。たとえば日本経済新聞が8月22日に報じたところによれば、西友が2016年5月にオープンする新店舗では、1階は通常のスーパーマーケットであり、2階はネットスーパー専用の倉庫となる。

店舗とは、そもそも消費者の近くにある存在だ。当然ながら、交通量や立地などを考え、消費者が行きやすい場所を目指す。しかし、考えるに、消費者が”行きやすい”とはオムニチャネル時代にあっては、一方的な考えにすぎない。商品を配送する観点から考えると、店舗は販売場所であり、同時に持っていく=物流拠点の意味を持たねばならない。

売り場面積を広げ取扱商品を増やすだけの施策は、俗に「浅いイノベーション」といわれる。それに対し、プライベートブランド商品を拡充したり、消費者データを分析したり、配送サービスを利便化したり、オムニチャネル化により絶え間ぬ付加価値を提供したりすることを「深いイノベーション」と呼ぶ。

前者の「浅いイノベーション」と言わざるをえないGMS(総合スーパーマーケット)では不振が続く。あのイトーヨーカドーでさえ先日、2020年までに40店舗の廃店を決断した。ユニーグループ・ホールディングスもここ数年で最大50店舗を廃店する可能性が高い。

ただ同じイトーヨーカドーであっても、先鋭的な取り組みを続けていたネットスーパー事業は売上高500億円と順調に推移している。これはセブングループ各社とのシナジーによって、さらに拡大していくだろう。

2017年には、消費税が増税されると言われている。スーパーマーケット各社は安穏とはしていられない。ネットスーパーの勃興が示しているのは、単なる各社のネット事業の誕生ではなく、リアル企業もネット企業も関係なく、生き残りを争う流通戦争の幕開けなのだ。




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