【新頂上作戦】山一抗争とは時代が違う…山口組分裂「謀反やない、一揆や」

「分裂は不可避のようです」。8月のお盆過ぎ、兵庫、大阪両府県警は情報収集に追われていた。前々から漏れ聞こえていた指定暴力団山口組内部の不協和音が、抜き差しならない状況になっていたからだ。

「新組織の結成式は30日らしい」「急に27日に変えたらしい」「離脱組は20団体近くになるか…」「切り崩しで尻込みする組長がいくらかいるようだ」

関係者からのリークや独り歩きする噂、警察当局の混乱を狙ったデマ…。分裂をめぐる情報戦は、虚実ない交ぜで拡大した。

「何人抜けるのか、いつ新組織を結成するのか、情報は錯綜(さくそう)していた。はっきりしていたのは、30年ぶりに山口組が割れるということだけだった」。捜査幹部の一人は振り返る。

8月27日朝、分裂の動きを受け、緊急の最高幹部会が開かれた神戸市灘区の山口組総本部周辺に、兵庫県警や大阪府警、愛知県警などの50人を超える暴力団担当の「マル暴刑事」が陣取った。組関係者の出入りを見張ったが、分裂の中心と目された山健組(神戸市中央区)の井上邦雄組長らは姿を見せなかった。

この数時間前の同日未明、井上組長らはすでに神戸市内で極秘の会合を持っていた。当初予想より欠けたが、直系組長(直参=じきさん=)13人が山口組を離れ、新組織を結成する腹を固めていた。

《現山口組六代目親分に於(お)かれては表面のみの「温故知新」》《利己主義甚だしく》《此(こ)の儘(まま)見て見ぬふりで見過ごしにする事は伝統ある山口組を自滅に導く行為以外考えられず》 

関係団体に送られた神戸山口組の挨拶状には、篠田建市(通称・司忍)6代目組長への批判が並ぶ。直系組長に課せられる年間数千万円の重い経済負担や、篠田組長の出身母体・弘道会(名古屋市)系の重用、意に沿わない直系組長の処分など人事への不満が背景にあったとされる。

「謀反やない、一揆や」。離脱組のある幹部は、今回の分裂劇の正当性をこう強調したという。

《このような内紛をしている場合ではない》《学習能力と反省が無いのかと思うと残念でならない》

9月1日、山口組総本部での定例会で、篠田組長の言葉が最高幹部から直系組長に伝えられた。離脱組を遠回しに非難する言葉の念頭にあるのは、昭和59年に始まった「山一抗争」だ。

跡目継承をめぐって山口組を二分した山一抗争は、4代目組長が暗殺され、一般市民や警察官も負傷するなど100人近い死傷者が出る未曽有の事件に発展。この抗争が暴力団対策法制定のきっかけの一つとなり、山口組が自らの首を絞める結果にもなった。

分裂を機に警察当局は取り締まりを強化しており、抗争となれば、より厳しい規制が叫ばれて暴対法などの法改正が進むことが予想され、組織存続にも関わる−。篠田組長の言葉からはそんな危惧と離脱組への怒りがうかがえる。

分裂から間もなく1カ月となるが、山口組、神戸山口組双方の勢力が入り交じる神戸や大阪で目に見える抗争の動きはない。全国でも同様だ。

現状では、暴対法や暴力団排除条例、組織犯罪処罰法などによる包囲網もあり、ある捜査幹部は「あのとき(山一抗争)とは違う」と冷静にみる。実際、山口組と神戸山口組は抗争禁止を傘下に通達済みだ。

しかし、シノギ(資金獲得活動)の現場など火種は存在する。東京や九州などの他団体との関係性も、今後の波乱要因となりうる。捜査幹部はつぶやく。

「このまま分裂後の体制が定着するのかどうか。目は離せない」




http://news.goo.ne.jp/article/sankei/nation/sankei-wst1509240015.html