無駄ではない。実を結ぶ 作家・瀬戸内寂聴さん

「なぜ、民の声を聞けないのか。不思議で仕方がない」

作家の瀬戸内寂聴さん(93)は、十九日に安全保障関連法を強行採決した政権に強い疑念を抱いた。それでも、若者を中心に巻き起こった大規模な抗議行動に「この反対の声は無駄ではない。いずれ実を結ぶ。決して『負けた』と思わず、声を上げ続けて」と未来への希望を託す。

瀬戸内さんはこれまで国会前の集会に足を運んだり、各地で催した講演会で法の危険性を繰り返し訴えてきた。「特定秘密保護法みたいに、だんだんと政府が一般の人たちの行動に口を挟むようになってきた。自由にものが言いにくくなった女学校時代、太平洋戦争直前と同じ空気を感じる」からだ。

「このまま行けば、ものが言えなくなる時代が来る。だって、秘密保護法に違反したら捕まるんだもの。でもね、牢屋(ろうや)が女の人で満員になっても言うことは言わなきゃ」

八月末、京都市内で自らの文学をテーマにした講演会があった。最後に一言と水を向けられると「明日、デモがあるでしょ。こんな話を聞きに来る人はデモに行かないと思うんだけれど、みんな行ってください」と呼び掛けた。

講演では、大正時代に婦人解放運動で活躍した伊藤野枝らを描いた自著「美は乱調にあり」(一九六六年)を挙げて「今この時代の若い人に読んでもらいたいの」とも語った。死を賭して革命に生きた人々の情熱や人間らしさに、今の若者の姿を重ねる。

「革命は大げさだけれど、こうやって闘う気持ちがよみがえったことは頼もしい」

法を成立させた政権に対しては「安倍(晋三)さんは、自分の名前を後世に残すことしか考えていない。反対の声は聞いていないのかな。防音装置で聞こえないようにしてるのかしら」と手厳しい。

「私はもう九十三歳。いつ死ぬか分からない。だから言うことは言っておかなきゃいけない。怖いものはない」

一方で「戦争を経験した人が何を言ってもだめね。『こんなにつらかったのよ』なんて、今の人には泣き言にしか聞こえないでしょ。もう役に立てないんですよ、本当は」。

だからこそ、若い人の情熱がまぶしく見えるのだろう。

「ここで反対をやめたら、負けたことになる。でもきっと、彼らはあきらめないですよ。私が言わなくても、彼らがいる限り、光はある」




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