抗日パレード見ないと非国民!? 中国の“ゆがんだ愛国心”

中国で、抗日戦争勝利を記念する軍事パレードの中継を見なかった人を「非国民」と決め付けて一斉に批判するなど、「愛国心」をめぐる極端な行動が話題になっている。今年を「戦勝70周年」と位置付ける習近平指導部が集中的に展開する愛国キャンペーンにより、他人に攻撃的な“ゆがんだ愛国心”が形成されているとの指摘もある。

「国を愛していないのか」

「新しい一日の始まり」-。台湾系の人気女性歌手、範●(=偉のにんべんを王に)●(=王へんに其)さんは3日午前、短文投稿サイト「微博」に短いコメントと双子の息子の写真を投稿。北京で軍事パレードが開かれている時間帯だったことから、「そんなことよりパレードを見ろ」などと一方的に範さんを非難する書き込みが殺到した。

範さんは翌日、「不愉快な思いをさせてしまった」と謝罪し写真を削除した。ほかにも、3日に「今日はいい天気」などとパレードと関係のない書き込みをした中華圏の著名人は、「国を愛していない」として次々と攻撃対象となった。

共産党・政府は今年、抗日をテーマにした記念活動やイベントを全国で開催し、中国人が団結して旧日本軍を打倒する内容のテレビドラマや映画を連日放映している。

こうした宣伝活動の下、国民の間で「愛国なら多少のことは許される」という雰囲気が生まれている。上海のアイスクリームチェーン店は、極東国際軍事裁判(東京裁判)で「A級戦犯」とされ、絞首刑となった東条英機元首相の顔をかたどった棒アイスを販売した。

「ファシズムそのもの」

河南省洛陽市の観光地では4日、A級戦犯として処刑された広田弘毅元首相らの名札を掲げた人形が並べられ、1000人近くが棒で人形をたたいたり目を突き刺したりするイベントが開かれた。またタイの空港では同日、中国人観光客の集団が航空機の遅延に抗議して大声で中国国歌を合唱した。

行き過ぎた愛国行動は国内で問題視され、当局も警戒を強めている。

党機関紙、人民日報系の環球時報は、極端な愛国行動の真の狙いは「(国が鼓舞する)愛国主義をおとしめることにある」と分析。習指導部が言論統制を強める中、愛国を口実に体制を揺さぶろうとしているとの見方も浮上している。

北京理工大の胡星斗教授は「愛国主義の名の下に他人の正常な行為をののしり、自身の基準に沿って行動しなければ非国民と決め付ける。これはファシズムそのものだ」と強い危機感を抱く。「(知識の偏った)愛国主義者は極端な感情に左右され、政治家の判断に影響を与えることもある」と指摘、日中関係への悪影響を懸念する。




http://www.sankei.com/world/news/150915/wor1509150012-n1.html