年金記録問題 確認手間取り支給に1年 高齢者「時間ない」

二〇〇七年に、確認ができない大量の年金記録が発覚した問題で、国が紙台帳とコンピューター記録を照合する作業は一四年三月末にほぼ終わり、今年六月には訂正記録を審査する第三者委員会も廃止された。ただ、持ち主が分からない五千万件のうち二千万件は、今も手がかりがないなどで未解明。記録が見つかっても支給されるまでの期間が長びいており、中には受け取る前に亡くなるケースもある。 

埼玉県吉川市の林和子さん(87)は昨年四月、八年前に亡くなった夫が戦時中に企業に勤めた記録が見つかり、年金を請求。約六十万円が全額払われるまで十一カ月かかった。「戦時中、体が弱い両親を支えながら夫が苦労して働いた証しで、私が受け取ることができ、うれしかった。高齢者は時間がないので、早く受け取れるといい」と林さん。

一方、横浜市の男性(70)の母親は昨年一月に亡夫の年金を請求したが、昨年十一月、全額が支給される前に九十六歳で他界した。男性は「母が亡くなる前に支給されていれば安心したと思う。あまりにも時間がかかりすぎる」と残念がる。未支給の分は男性が受け取ることになり、あらためて請求したが、支払いの連絡はまだないという。

〇七年の問題発覚当初、見つかった年金の支給までの平均期間は十カ月かかり、「遅すぎる」との批判が出た。このため日本年金機構は作業効率を見直すなどし四カ月程度に短縮した。

しかし記録の照合が終わったころを境に、支給までの期間は徐々に延び、最近は一年近くかかることも多い。機構によると、記録の訂正を請求したのに未支給のままなのは、六月末時点で約九万件という。

記録の確認や支給業務に当たる機構の担当者の数は減っていない。機構は「手作業で記録を確認しなくてはならない難しいケースが残ってしまっている。今後も、少しでも早く支給できるようにしたい」と説明。社会保険労務士で年金評論家の柴田友都(ゆういち)さんは「問題を理解し作業にも習熟したベテランが定年などで減ったことも一因だ」と指摘する。

三年前、母親とともに亡父の年金を請求した神奈川県平塚市の男性(66)は「年金の多くは戦時中、戦後と苦労してきた人が国に払ってきた掛け金。国は問題は終わったとせず、しっかり取り組んでほしい」と話している。

<年金記録問題> 

2007年、国民年金や厚生年金の保険料を納めたのに、旧社会保険庁に記録が残っておらず「未納」とされた事例が発覚した。持ち主が不明な「宙に浮いた年金記録」5095万件のうち、15年3月時点で2032万件が解明されていない。




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