避難指示解除の楢葉町 病院なく買い物も町外…放射性物質に根強い懸念 住民帰還へ課題多く

福島県楢葉町で4年半ぶりに、故郷への定住が許された。喜ぶ町民がいる一方で、医療機関やスーパーなど日常生活に欠かせない施設の整備は遅れている。放射性物質の影響による不安も拭えず、本格帰還に向けては課題が山積している。

避難生活が長期化する中で体調を崩す人が増え、福島県内の震災関連死者数は、今年3月末時点で1914人に上った。政府は、故郷への早期の帰還を望む高齢者などの要望に応える形で、避難指示の解除に踏み切った。

だが、帰郷する人たちにとって、まず心配なのが、医療機関の不足だ。楢葉町を含む双葉郡(8町村)の医療態勢はまだ整っておらず、同町に建設が始まっている県立診療所の開所予定は来年2月。患者は南側にある広野町やいわき市の病院への通院を余儀なくされる。

双葉地方広域市町村圏組合消防本部によると、東日本大震災前に比べて、救急搬送に要する平均時間は1・5倍に延びているといい、同本部の大和田仁次長は「綱渡りの状況だ」と懸念する。

買い物もまだ不自由な状態だ。営業しているのは仮設のスーパーとコンビニ2店舗で、本格的な買い物には町外に出ざるを得ない。放射性物質への懸念も根強く、町内にある木戸ダムを水源とする住民にとっては「安心して飲めない」といった声も聞かれる。

町内の小中学校の再開時期も平成29年4月で、1年半以上先になる。児童・生徒のいる家庭の帰還の足が鈍る理由だ。小中学生538人の保護者に行ったアンケートでは、学校が再開した場合に「通学する」と回答したのは36人。検討中を含めても79人で、学校が再開したとしても子供の声が町に響く日は遠い。

復興庁や県、楢葉町が昨年10月に実施したアンケートでは、町に「すぐに戻る」と答えたのは9・6%で、「条件が整えば戻る」と合わせても45・7%と半数以下だ。

復興への足がかりはある。町内では平成24年10月から、地元の観光名所だった天神岬の温泉施設が営業を再開した。今年10月には地域の観光資源の1つとなっている木戸川のサケ漁も再開される。

ふるさと復興への期待と、将来への不安が交錯する中、本格帰還のためには、町民に寄り添ったきめ細かい支援が求められている。




http://www.sankei.com/life/news/150905/lif1509050009-n1.html