マイナンバーに身構え 市民ら「違憲」と一斉提訴へ

改正マイナンバー法が三日成立し、預金口座やメタボ健診の結果まで個人番号と結び付けられるようになる。国は脱税防止や行政手続きの簡素化を狙いとするが、個人情報の流出や国による国民監視などを不安視する声は根強い。個人番号の通知開始を十月に控え、「マイナンバー制度は違憲」として、訴訟を起こす動きも。一方、中小企業は「どうすればいいの」と困惑している。 

制度に反対する弁護士らのグループは「プライバシー権を保障した憲法に違反する」として、十二月にも東京、大阪など七地裁で一斉提訴する。

大阪での訴訟に関わる予定の坂本団(まどか)弁護士は「個人番号が売買されたり、国による個人情報の一元管理が進んだりする」と制度の危険性を指摘。「改正法で個人番号と結び付く情報の範囲が広がり、ますますプライバシーが侵害される可能性が高まった」と話す。

民間企業も個人番号を扱うようになる点について「個人番号は使っていいケースといけないケースが決められている。大企業であれば研修などで周知できるかもしれないが、小規模な会社でそれが可能だろうか」と疑問を呈し、流出の可能性を懸念する。

市民団体「共通番号いらないネット」代表世話人の白石孝さんは「銀行や証券会社などに個人番号情報が蓄積されると、それらの民間会社がハッキングされた場合、個人番号と結び付いたお宝情報が漏えいする可能性もある」と話す。

同様の制度がある米国など諸外国では、民間企業が個人番号情報を蓄積するようになってから多くの問題が起きているという。個人番号を闇取引したり、個人番号を使ったID詐欺が横行したりして、犯罪を助長している。白石さんは「民間企業に個人番号を開放すれば、ハッキングのリスクが高まり、新たな犯罪につながりかねない。非常に危険だ」と警鐘を鳴らす。

東京都中央区は八月、中小企業の経営者らを対象にマイナンバー制度をテーマに経営セミナーを開いた。二百人の募集定員は埋まり、締め切り後も問い合わせが相次いだという。

弁護士を招き、制度の基礎知識のほか、従業員から個人番号を集める時の周知の仕方や実際に提出してもらう方法、保管・管理上の注意点などを説明した。区の担当者は「実務的な対応方法がつかめず心配している業者が多い」と話す。

葛飾区の玩具メーカーの社長は、マイナンバー制度の関連資料に目を通し始めたばかり。「個人番号で手続きなどがスムーズに進むのはよいことと思うが、何に使われるのかが、まだよく分からない」と率直な感想。「社員らは制度のことを、あまり知らないと思う。浸透するには時間がかかるのでは」と話す。

従業員から個人番号の提供を受ける際には「なりすまし」を防ぐために、運転免許証などを用いた本人確認が求められている。同社の従業員は約三十人。「全員の顔を知っている。それでも確認しないといけないのだろうか」と困惑する。

<マイナンバー制度> 

日本に住む一人一人に割り当てられる12桁の番号で、税や社会保障などの個人情報を一元的に管理する。それぞれの個人番号を記載した「通知カード」が10月以降、市区町村から住民票の住所地に送られる。

運用開始は来年1月。所得や納税の記録が結び付けられ、健康保険組合などは予防接種やメタボ健診の情報を個人番号で管理できるようになる。18年からは、金融機関の預金口座を個人番号と結び付けるかどうか預金者が任意で選ぶ。

企業は来年1月から源泉徴収票への記載などのため従業員のナンバーを収集、管理することが求められる。故意に個人情報を漏えいさせた場合、担当者は最大で4年以下の懲役と200万円以下の罰金、企業には罰金刑が科せられる可能性がある。




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